ミニストップの業績が深刻だ。2020年2月期連結決算は、最終損益が57億円の赤字(前期は9億1600万円の赤字)だった。最終赤字は3期連続。売り上げが減ったことに加え、繰り延べ税金資産の取り崩しなどにより法人税等調整額を23億900万円計上したことが響いた。
売上高にあたる営業総収入は、前期比5.8%減の1934億円だった。チェーン全店売上高が前期比5.9%減と落ち込んだことに加え、韓国のコンビニ事業が日韓関係の悪化により19年7月以降、売り上げが計画を下回ったことが響いた。連結営業損益は30億円の赤字(前期は5億5100万円の赤字)だった。営業赤字は2期連続。
ミニストップの国内コンビニ事業は長らく不振が続いていた。既存店売上高は20年2月期こそ前年をわずかに上回ったものの、19年2月期まで3期連続で前年を下回っていた。客数は19年8月まで43カ月連続でマイナスだ。このように厳しい状況にあったため、ミニストップは不採算店の閉鎖を進めてきた。19年3~5月には大量閉店を実施。この3カ月間だけで193店を閉店している。
ミニストップは現在、全国に約2000店を展開する業界4位だが、大手3社の影に隠れがちだ。業界首位のセブン-イレブン・ジャパンは約2万900店、ファミリーマートが1万6600店、ローソンが1万4400店を展開しており、ミニストップはだいぶ後方を走っている。店舗の販売力も見劣りする。19年度の日販(1店舗の1日あたり売上高)はセブンが65万6000円、ローソンが53万5000 円、ファミマが52万8000円となっているが、ミニストップは42万6000円と圧倒的に低い。
店舗数の多さと日販の高さは、ある程度比例する。店舗数が多ければ大量取引を持ちかけることができるので、商品を供給するメーカーに対して強い交渉力を発揮できる。そのため、有利な条件で商品の供給を受けることができる。これは特にプライベートブランド(PB)で効果を発揮する。セブンが扱うPB「セブンプレミアム」の評価が高いのも、店舗数の多さからくる強い交渉力で良い商品を開発してもらえるためだ。この観点から考えると、ミニストップは店舗数が少ないので不利といえる。それが日販の低さに表れている。
高い日販を実現したコンビニは、出店もスムーズに進む。大手3社は高い日販を背景に出店攻勢をかけ、それにより大手3社による寡占が進んでいった。それに伴いミニストップは隅に追いやられ、既存店売上高はマイナス傾向が続くようになった。
ミニストップの反転攻勢
ところが、19年8月以降はプラスが続くようになった。20年2月までの7カ月すべての月で前年を上回っている。これは、商品戦略が功を奏したことによる。
まずは昨年7月に「おにぎり」の価格を引き下げて税別100円に統一したことが奏功した。値下げしたことをアピールするテレビCMを放送するなど、積極的なプロモーションを実施したこともあり、おにぎりの売り上げは好調に推移した。また、今年1月には「ホットコーヒー」の価格を同93 円から同80円に引き下げている。ミニストップのおにぎりとホットコーヒーは値下げにより価格競争力が高まり、集客に大きく貢献した。
昨年9月に発売したホットスナック「チーズハットグ」も売り上げに貢献した。チーズハットグは韓国が本場のホットドッグで、一昨年ごろから日本で若い女性を中心に流行し始めた。ミニストップのチーズハットグは、モッツァレラチーズとソーセージをザクザクした食感の衣で包んでおり、これがヒットした。また、10月に発売した「タピオカドリンク」も売り上げに大きく貢献している。ブームとなったタピオカが入ったドリンク「タピオカミルクティー」と「タピオカいちごミルク」を売り出し、好評だったという。
こうした商品戦略が功を奏した。20年2月期上期(19年3~8月)は、既存店売上高が前年同期比1.8%減、客数が3.6%減と不調だったが、下期(19年9月~20年2月)は既存店売上高が3.2%増、客数が1.6%増と好調に推移している。下期の盛り返しで通期の既存店売上高は0.6%増とプラスを確保した。ただ、店舗数減少などが響き、国内事業は振るわず、同事業の営業総収入は2.2%減の814億円、営業損益は22億円の赤字(前期は3億4400万円の黒字)と悪化した。
新型コロナの影響
今後は、新型コロナウイルスの感染拡大が大きな懸念材料だ。もっとも、ミニストップはそれほど悲観する必要はないだろう。新型コロナの影響が色濃く出た今年3月でも、既存店売上高が前年同月比2.1%減と、それほど落ち込んでいないためだ。他の小売業や外食店では2割以上の落ち込みも珍しくなく、それと比べるとだいぶマシといえる。また、同業の競合と比べても落ち込みは小さく、セブン(3.2%減)やファミマ(7.6%減)、ローソン(5.2%減)よりもダメージが少ない。
ミニストップでは、3月は新型コロナの感染拡大に伴いマスクなど紙衛生品の既存店売上高が前年同月比27.9%増と大きく増えたほか、一斉休校や在宅勤務の拡大により自宅での飲食需要が高まり、デイリー食品が15.8%増、調味調材が12.5%増、冷凍食品が10.4%増、加工食品が9.8%増、ラーメンが7.3%増、酒類が2.0%増と、それぞれ伸びたという。また、80円に値下げしたホットコーヒーやタピオカドリンクがけん引し、ドリンク分類が46.6%増と大幅増だったほか、チーズハットグなどを20円引きで販売するキャンペーンの効果により串もの分類が87.7%増と大きく伸びている。
今期(21年2月期)は、商品販売を強化して売り上げを確保する考えだ。100円おにぎりと80円ホットコーヒーで伸長している朝食市場を捉えたことから、朝食商品を重点的に強化し、午前5時から午前8時台の客数を10%伸ばすことを狙う。また、毎月ひとつの商品にフォーカスして、それを集中的に販売し売り上げ増を狙う。3月は1980年の設立以来40年間販売しているソフトクリームにおいて初の味となる「佐藤錦さくらんぼソフト」を発売した。4月には設立から40年間販売している「ソフトクリームバニラ」を6年ぶりにリニューアルし、「ソフトクリーム新バニラ」として発売している。
グループのPB「トップバリュ」の取扱高も増やす。今期は前期比5割増の245億円を目指す。一例としては、パスタなど調理麺のPB化を進めるという。また、中間流通を省いた「直接貿易商品」の取り扱いを増やし、収益性の改善も図る。前期にタピオカドリンクやチーズハットグを直接貿易商品として販売したが、今期はこの直接貿易商品を拡大させる方針だ。さらに、ソフトクリーム専門の新業態店「ミニソフ」の本格展開を始めるほか、ソフトクリームの原材料供給とメニュー提案を行う事業も推進する。こうした施策で売り上げを確保したい考えだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)