日産自動車系列で最大の部品メーカー、カルソニックカンセイの株価が6月13日、前週末比128円(15%)高の996円まで上昇した。日産が保有しているカルソニック株式を売却するための1次入札を締め切ったことが刺激材料となった。
日産は現在、カルソニックカンセイに41%出資しており、全株式を売却する。1次入札には米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、ベインキャピタルや、アジア系のMBKパートナーズなどが応札した。
ファンドの中にはTOB(株式公開買い付け)で全株式の取得を目指す動きもある。TOBならプレミアムが付くので、買収額が3000億円規模に達する可能性があるとの見方まである。
思惑が先行して株価が上昇したわけだが、その後の株価は800円台後半で推移している。
軽自動車の燃費偽装問題で揺れる三菱自動車に2373億円を出資して傘下に収める予定の日産は、カルソニックカンセイ株の売却で1000億円規模の資金調達を計画している。10月に予定されている三菱自の第三者割当増資を日産が引き受け、三菱自株式の34%を取得。三菱グループを上回り、筆頭株主となる。
日産はカルソニック株式の売却で得た資金を三菱自への出資の一部に振り向けるほか、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などの先進技術の開発に充当する。
カルソニックカンセイは日産系列の部品メーカーの中核
カルソニックカンセイは2000年4月、エアコンとラジエーターを主力とするカルソニックと、計器類や樹脂製品を手掛ける日産系の部品メーカーのカンセイが合併して発足した。合併を発表したのは1999年3月。ルノーと日産の提携が発表される直前だった。ルノーと提携後だったらカルソニックカンセイは誕生していなかったといわれている。
日産にCOO(最高執行責任者)として乗り込んできたカルロス・ゴーン氏(現社長兼CEO)は、系列の解体を宣言。部品調達に競争原理を導入し、系列部品メーカーの株式を次々と売却していったからである。
新しく発足したカルソニックカンセイも身売りの俎上に上った。米国の大手部品メーカーに売却する方針だったが、交渉がまとまらなかった。2005年、日産が第三者割当増資を全額引き受けて子会社にしたことから、表面上は日産との関係が深まったように見えた。
確かに、子会社になったことでカルソニックカンセイは、日産系列の部品メーカーの中核となったが、ゴーン氏の経営哲学は不変で、日産グループからの離脱は避けられなかった。
16年3月期の連結決算は主要顧客の日産の北米販売が好調だったことから、売上高が初めて1兆円を突破した。売上高は前期比9%増の1兆533億円、営業利益は21%増の382億円、純利益は12%増の225億円だった。
取引の8割を日産向けで占めているが、本田技研工業(ホンダ)や米ゼネラル・モーターズ(GM)など国内外のメーカーとの取引もある。
日産系列からの離脱後は、投資ファンドに買収されて、海外企業を含めた自動車部品メーカー再編の重要なカードとなる可能性が高い。