毎年のように期初の業績見通しと決算実績の大きな乖離が発生している、あるバイオベンチャーがある。UMNファーマ(東証マザーズ上場)がそれだ。同社は独自の製造技術を有するバイオベンチャーで、バイオ医薬品を提携先と共同開発するビジネスモデル。遺伝子組み換え技術を利用し、インフルエンザワクチンの開発などを行っている。
同社は今年10月18日に、2016年12月期業績の下方修正を発表した。売上高は従来20億4400万円~24億2800万円と幅を持たせた計画だったが、わずか8400万円にとどまると修正。営業利益も23億1500万円~22億8200万円の赤字予想だったが、これを上回る33億9100万円の赤字になるという。
提携先のアステラス製薬とインフルエンザの予防・効果で厚生労働省に対して製造承認申請を行っているが、今期中の承認が困難になったと判断したことが下方修正の主因としている。バイオベンチャーで業績の変動が大きいのは、ある程度はやむを得ないともいえる。
しかし、UMNは12年12月の上場以降で、業績を下方修正するのは実に4年連続なのである。13年12月期は当初売上高20億円、営業利益赤字19億円予想が、それぞれ9300万円、46億円強の赤字に減額。この時はインフルエンザワクチンのアジア地域でのライセンス供与にかかる提携契約やパイプライン(開発案件)の提携が期中に完了しないという理由だった。
14年度は期初の売上高予想の約22億円が11億円にとどまり、営業損益も32億円の赤字予想が39億円に拡大すると年末に公表。インフルエンザワクチンのライセンス供与で提携すべく交渉してきたが、中国での医薬品輸入にかかる現地規制の観点などから、社が想定するスキームでの合意に至らなかったとしている。
15年度は当初23億円強の売上高だったが同年10月に2億円強に修正、営業利益は同17億円の赤字予想が32億円強に広がるとしている。ここでは今期同様に、アステラス製薬とインフルエンザワクチンについて申請しているが、当期中の承認は困難としている。
「楽観的な業績予想を組んでは、届かないという事態を繰り返しており、投資家は同社の決算を信じられない状況になっている」(市場筋)
株価は上場翌年の13年に9830円(株式分割などを考慮した実質、以下同)まで買われたが、その後は下方修正を繰り返したことに嫌気が差し、処分売りが相次ぎ、今年8月には1103円と89%の下落となっている。