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ワタミ、売上9割減で危機…再建の柱・焼肉食べ放題「一人3千~4千円」に“高い”の声

文=編集部
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和民の店舗(「Wikipedia」より/Asanagi)

 高品質のA4和牛が回転寿司店のような特急レーンに乗って運ばれてくる。1人3980円で国産和牛や麺類、寿司、サラダ、アイスなどが食べ放題――。

 ワタミは今春、焼肉食べ放題の新業態「上村(かみむら)牧場」1号店「京急蒲田第一京浜側道店」を大田区蒲田に出店した。6月には大阪府守口市に関西1号店をオープン。年内には台湾台北市とベトナムホーチミン市にも出店する予定という。ワタミがカミチクホールディングス(鹿児島市、上村昌志会長、非上場)と設立した合弁会社、ワタミカミチクが上村牧場の運営にあたる。

 カミチクグループでは直営牧場で1万8000頭、南九州の預託農場で4万4000~5000頭の肉用牛・乳用牛を飼育している。4等級以上の鹿児島県産和牛に限定した「薩摩牛」や、豪州産Wagyuの素牛を鹿児島県内の自社農場(カミチクファーム)で飼育した肉専用種「南国黒牛」などを生産している。上村牧場では「薩摩牛」「南国黒牛」を看板牛として各種メニュー・コースを用意、食べ放題コースは1人当たり2980円、3580円、3980円で提供する。

 上村牧場の事業説明会でワタミの渡邉美樹会長は「居酒屋業態をもう一度蘇らせたい。そのためには、ウリとなるものが必要だ。カミチクグループは、さまざまな部位や等級の牛肉を手掛けている。ワタミとしてはカミチクの牛肉を全面的に使わせてもらいたい」と語った。系列の居酒屋などにも和牛を供給し、業務提携を広げていく。

 上村牧場について渡邉会長は「向こう5年で国内200店舗、海外10カ国100店舗。10年では国内400店舗、海外20カ国300店舗のチェーン店を展開していきたい。1店舗当たりの年商は2億円を超えるため、かなりのボリュームの商売ができるのではないか。海外では、台湾、ベトナムのほか、中国、米国、韓国、マレーシア、シンガポールへの進出を考えており、上村牧場とともに世界を切り開いていく」と自信をのぞかせた。

居酒屋「新御三家」のワタミは新興勢力の後塵を拝す

 居酒屋は1980年代のバブル景気に合わせて成長してきた。「御三家」と呼ばれる養老乃瀧、村さ来、つぼ八がチェーン居酒屋市場を開拓した。バブル崩壊後に台頭したモンテローザ、ワタミ、コロワイドは「新御三家」といわれた。居酒屋は浮き沈みが激しい。全品298円均一価格の鳥貴族や串カツ田中などの新興勢力が次々と登場してきた。

 この結果、ワタミは居酒屋の負け組に転落。損失を穴埋めするために有料老人ホームが100カ所を超えるまでに成長した介護事業を売却せざるを得なくなり、その後も業績悪化に歯止めがかからなかった。6年間の参議院議員生活を終えた渡邉氏は19年10月、「創業者の責務」として、「絶対に戻らない」としていたワタミの会長兼グループCEO(最高経営責任者)に復帰した。

 再建に取り組んだ直後に新型コロナウイルスの直撃を受けた。ワタミの国内外食事業の既存店売上高は、20年1月は前年同月比6.7%増。2月は1.2%増と持ち直していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛要請により壊滅的な打撃を受ける。3月の既存店売上高は40.4%減、4月92.5%減、5月92.8%減と記録的な落ち込みとなった。

【ワタミ国内外食事業の既存店売上高の前年同月比推移】(単位%)

        20年3月  4月   5月   6月   7月

既存店売上高  ▲40.4  ▲92.5  ▲92.8  ▲68.9  ▲52.9

(▲はマイナス)

 20年3月期の連結決算は売上高が前期比3.9%減の909億円、営業利益は91.3%減の9200万円、最終損益は29億円の赤字(19年3月期は13億円の黒字)となった。減収は6年連続。新型コロナウイルスにより居酒屋の客足が減少。送迎会シーズンの3月の既存店売り上げの落ち込みが痛かった。宅食事業も競合企業が増え注文が減った。最終赤字は3年ぶり。期末配当は2.5円。前の期(7.5円)から大幅に減配した。

テイクアウト主体の「から揚げの天才」が人気

 経営に復帰した渡邉氏は、コロナ禍にどう立ち向かおうとしているのか。緊急事態宣言が出された直後の4月8日から5月25日まで、国内の直営店を休業。採算が取れない居酒屋「和民」や「鳥メロ」「ミライザカ」など65店を来年3月までに閉店する。クローズする店は491店の13%に当たる。今後も需要の回復が見込めない店の撤退に踏み切る。

「マーケットが1地域1店しか許容しないのなら、その規模に合わせるしかない。時代に合わせた店をつくるだけだ」(渡邉氏)

 20年4~6月期決算の売上高は前年同期比44.3%減の127億円、営業損益は37億円の赤字、最終損益も45億円の赤字だった。主力の国内外食事業の売上高は21億円と81.4%も激減。営業損益段階で33億円の赤字(前年同期は1億円の黒字)となった。夜の営業が中心の居酒屋はハンバーガーなど他の外食と比べて客の戻りが鈍い。

 渡邉氏は、ポストコロナ時代の居酒屋の数は7割程度にまで縮小すると予測している。今後は、家族や女性が利用しやすい業態の開発を進める。その1つが、「から揚げの天才」。揚げたてのから揚げと、実家が玉子焼き店を営んでいるテレビタレントのテリー伊藤氏のノウハウを掛け合わせて誕生した業態。18年11月、大田区梅屋敷に1号店がオープン。19年4月、一般社団法人日本唐揚協会が実施した全国の唐揚げ店人気投票「第10回からあげグランプリ」(東日本しょうゆダレ部門)で「から揚げの天才」は金賞を受賞した。

 新型コロナウイルスの影響でテイクアウトに注力。いちやく人気店となった。1個99円(税抜き)の「デカから(白・黒・赤)」と、2分の1にカットした本格玉子焼き(350円)が大人気だという。20年度内に「から揚げの天才」を100店舗出店する予定としている。

 もう1つの営業の柱が焼き肉食べ放題の「上村牧場」なのである。家族連れで訪れるには、1人当たり2980~3980円の価格帯は高いという声がある。渡邉氏が進める業態転換は実を結ぶのだろうか。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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