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赤字でも報酬14億で批判殺到のユーシン社長、赤字96億でついに辞任…二女は取締役残留で紛争の火種に

文=編集部
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赤字でも報酬14億で批判殺到のユーシン社長、赤字96億でついに辞任…二女は取締役残留で紛争の火種にの画像1「Thinkstock」より

 自動車電装品メーカーユーシンは1月10日、代表取締役の異動や2016年11月期業績予想の下方修正、役員報酬の減額を発表した。

 代表取締役会長兼社長の田邊耕二氏が1月10日付で「一身上の都合」により辞任。新代表取締役社長には岡部哉慧専務が昇格した。

 16年11月期(通期)の連結売上高は、当初予想から11億500万円減額し1538億円。最終赤字は当初予想の17億円から96億5900万円へと急激に拡大した。フランスの自動車部品大手Valeo(ヴァレオ)から13年に買収したアクセスメカニズム事業(キーセットやドアハンドル)の「のれん代」の未償却残高55億8100万円を一括して減損損失とした。これに伴い繰延税金資産の一部取り崩し(10億500万円)を行ったことや、固定資産の一部減損(11億2100万円)もあって赤字が膨らんだ。1株10円としていた期末配当を無配にした。

 役員報酬の減額内容は、17年1~2月の2カ月間、月額基本報酬額を5~50%減額としている。田邊氏は50%減額だった。業績悪化に加えて、委託業者への下請け代金1億4200万円を不当に減額したとして昨年、公正取引委員会から勧告を受けたことに対する経営責任を明確にした。

 取締役の報酬額改定では役員報酬総額を年30億円から5億円以内へと、6分の1に減額するなど、新体制で業績の早期改善を図るとしている。会社側は田邊氏の辞任について、「引責辞任」とはしていないが、ユーシンの“帝王”と呼ばれた田邊氏を切って、新体制で再建に取り組むかたちだ。

 田邊氏は1978年、創業家の2代目として社長に就任以来、40年近くにわたって最高実力者の座に君臨してきた。ユーシンは、果たして“田邊独裁体制”と決別できるのだろうか。

赤字会社なのに役員報酬は日本一

 田邊氏は、高額な役員報酬で一躍、有名になった。ユーシンは14年11月期の最終損益が4億3300万円の赤字だったにもかかわらず、田邊氏の役員報酬を14億500万円と前期の8億3400万円から1.7倍に増額した。それまでの役員報酬の最高額は、カシオ計算機元名誉会長の故・樫尾俊雄氏が12年3月期に手にした13億3300万円だったが、田邊氏が塗り替えた。樫尾氏の数字は退職慰労金が主だったが、田邊は基本報酬(7億7500万円)と役員賞与(6億3000万円)だった。巨額の役員賞与は業績の裏付けがなければ出せないはずだが、会社は赤字だったため、株主から「会社の私物化」と批判を浴びた。

 ユーシンは株主総会で役員報酬総額の上限をそれまでの10億円から3倍の30億円に引き上げ、田邊氏はすぐさま7割増しの役員報酬を手にした。さらに、続く15年11月期の最終損益の黒字は2億2600万円にとどまったが、田邊氏の基本報酬は前年比1.2倍の9億3500万円で役員賞与はなしと決定された。このうち5200万円を返上して、役員報酬は8億8300万円となった。ところが有価証券報告書では、なぜか8億8200万円となっている。高額報酬の批判を浴びたため、ほんの一部返上したのだろうといわれている。

 それでも、社外取締役を除く取締役8人の基本報酬総額10億9500万円のうち、実に85%が田邊氏の取り分だ(返上前の基本報酬9億3500万円で計算)。役員報酬を“一人占め”にした格好だ。

 有価証券報告書によると、役員の報酬の返上分は5800万円で、このうち田邊氏は5200万円となっている。返上後の報酬総額は10億3700万円で、田邊氏の取り分は8億8200万円であるため、占有率は同じく85%だ。

 16年11月期の最終損益は96億5900万円の大赤字。役員報酬はまだわからないが、基本報酬はさほど変わらないといわれている。ユーシンは2月24日、第115回定時株主総会を開催するが、そこで株主から役員報酬について厳しく追及されるのは確実だ。役員報酬の返上を求められることになるだろう。

二女・田邊世都子氏をどう処遇するのか

 田邊氏は06年、元日産自動車常務で自動車部品会社ナイルス(現ヴァレオジャパン)の社長だった竹辺圭祐氏を社長に招き、自らは最高顧問に退いたが、わずか2年で社長に復帰した。

 10年には、社長公募という奇策に打って出た。元外務省キャリア官僚の八重樫永規氏を選出して社長代行に据えたが、「商売には向いていない」として、あっさりクビにした。14年にも、2度目の社長公募に乗り出したが、「いい人材がいない」と書類選考の段階で打ち切った。

 15年9月12日付日本経済新聞は、「自動車部品のユーシンは次期社長の公募を断念、2016年2月から3人の役員による集団経営体制を取る。1978年からトップを務める田辺耕二会長兼社長(81)は現職にとどまるが、意思決定には参加しない」と報じた。

 表向きは、16年2月から集団経営体制に移行したことになっているが、田邊氏は代表取締役会長兼社長を続投し、代表権を手放さなかった。

 田邊氏の“意中の人”が、二女の田邊世都子氏であることは衆目の一致するところだ。11年5月に取締役に就かせ、田邊氏が「3人による集団経営体制」をぶち上げたとき、そのひとりに世都子氏の名があった。

 今回の人事では、3人のうち岡部氏が代表取締役社長、住友銀行(現三井住友銀行)出身の瀬古義久常務が代表取締役副社長に昇格した。世都子氏は取締役のままで、事実上、2人体制に移行したといえる。

 昨年の株主総会では、世都子氏の解任動議が出された。今年の総会に世都子氏の取締役再任案が提出されれば、総会は大荒れになる可能性が高い。新体制では、世都子氏をどのように処遇するのか。田邊独裁体制からの脱却の本気度が問われている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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