健康のことを考えて、自転車通勤を始める人が年々増えているようだ。特に、電動アシスト自転車は、長距離運転や坂道でも快適に走ることができるとして注目を集め、新製品も続々と登場している。
インターネット通信販売でも、手ごろな価格の製品を見かけるが、なかには「違法」とされるものがあるので注意が必要だ。
2016年10月、警察庁は電動アシスト自転車として販売されている商品のうち、道路交通法の基準に適合しない製品を発表した。
ここで問題となったのは、「アシスト比率」だ。道路交通法では、人がペダルを踏む力とモーターの補助力の比を、走行速度時速10km未満では最大で1:2と定めている。時速10km以上では走行速度が上がるほどアシスト比率を徐々に減少させ、時速24km以上のときには補助力が0にならなければならない。
この基準に適合しない製品を公道で使用することは違法であり、ひいては事故につながる可能性もあるという。しかし、実際には違法自転車が市場に出回ってしまっているのだ。
基準適合外となる電動アシスト自転車を扱っていたとされる企業数社に問い合わせたが、いずれも「担当者不在」などとして回答を得られなかった。そんななかで、丁寧に答えてくれたのが株式会社永山だ。
「基準外と指摘を受けた製品は、ある商社を通して海外から輸入したものです。最初に仕入れたのは5年ほど前で、合計200台弱を販売しています。恥ずかしながら、当時はアシスト比率に対する知識も少なく、製品の検証なども行わずに販売してしまい、多くの方にご迷惑をおかけして申し訳ない気持ちでいっぱいです」(永山広報担当)
永山では警察庁の発表を受け、購入者から製品を回収して、法定のアシスト比率に収まるようにシステムを書き換えたものを再発送するという対応をとっている。また、その経緯を警察庁にも報告しているという。
「今回の反省を踏まえ、電動アシスト自転車の自社開発を行うことになりました。中国の工場へ出向いて製品をチェックするのはもちろん、国内でもアドバイザーの指導のもとで仕様書を自分たちで作成しています。
完成した製品は車両検査協会で基準に適合しているかチェックを受けていますし、バッテリーや充電器も、電気用品安全法に適合しているという法的な書類を揃えております。現在、販売している製品は、自信をもってお客様にお勧めできるものばかりです」(同)
永山は過去の失敗に誠実に向き合うことで自信作を開発することに成功したが、現在でも、ネット上では海外から仕入れたものを日本の基準に適合させずに販売しているサイトが見受けられるという。販売する事業者が道交法を熟知していないために、こうした問題が起きると推測される。
違法自転車を見分ける方法
では、違法製品をつかまされないためには、どこをチェックすればいいのだろうか。
「基準外の電動アシスト自転車を取り扱ったことはない」と回答する、サイクルベースあさひを運営する株式会社あさひに話を聞いた。
「国内で電動アシスト自転車を販売するために、一定の基準をクリアした商品に適用される『型式認定』という制度があります。したがって、購入しようと思う商品については、まず型式認定シールをご確認ください。また、自転車協会で定めた基準をクリアした商品には、『BAA』シールも貼付されています」(あさひ広報担当)
同社が仕入れるメーカー品には、各商品にこの型式認定シールが貼付されている。これは公益財団法人日本交通管理技術協会の審査をクリアしたことを証明するもので、電動アシスト自転車を購入する際は、このシールの有無をチェックすることが大事だ。
また、さまざまなモデルの電動アシスト自転車が発売されている昨今、利用条件に合わせて走行距離やモデルを選ぶとよいという。
同社では、電動アシスト自転車のネット通販も行っているが、専門知識を有したスタッフに説明を受けてから乗車できるよう、ネットで注文したものを店舗で受け取れるサービスも行い、ユーザーをフォローしている。
だが、基準をクリアした自転車であっても、正しく乗りこなせなくては真の安全を手に入れたとはいえない。そこで、乗車する際の注意点についても話を聞いた。
「電動アシスト自転車は、ペダルを踏み込むとアシスト力が働き前に進む構造になっています。したがって、必ずサドルにまたがった状態で漕ぎ出してください。いわゆる『ケンケン乗り』は危険です。また、信号待ちなどで停車する際は、ペダルから足を下ろしてください。
さらに、どの自転車にもいえることですが、『乗り物』ですので定期的なメンテナンスが必要です。半年に1回は自転車専門店で定期点検を受けていただくことをお勧めします。乗車前には、ブレーキや空気圧など、安全上、必要な点検をされることもお忘れなく」(同)
電動アシスト自転車の価格は下がってきているとはいえ、まだ通常の自転車と比べれば高価である。そこに安価な製品が登場すれば、つい手を出したくなるが、違法車で公道を走れば違法行為となる。つまり、結果的には高い買いものになってしまう。
購入時はシールの有無などで自ら適法性をチェックするのはもちろん、車両を熟知したスタッフのいる専門店や、ささいな問い合わせにも誠実に答えてくれる通販サイトを選ぶことが重要だ。
(文=OFFICE-SANGA)