自転車はあまり危険ではないと思っているのなら大間違い。自動車事故が減少している一方で、自転車による事故の割合は増えていて、重大な事故につながるケースも少なくないのだ。日本損害保険協会の調べによれば、相手を死亡させたり重い障害が残るほどの事故を起こした場合には、約5000万円の賠償額が必要になるという。今年7月には、当時小学5年生だった少年が乗った自転車が歩行者と衝突した事故をめぐる損害賠償裁判で、少年の母親に約9500万円の賠償を命じた判決が出て、話題になった。
ルールを守ることが大前提ではあるものの、不測の事態に遭遇しないとは限らない。頻繁に自転車を利用するのであれば、「自転車保険」への加入を考えてはどうだろうか。ちなみに、自動車保険に入っていても、自転車で起こした事故は補償の対象外。医療保険からも自分がケガをしたのでない限り給付金は出ない。自転車事故に対応するには、自転車保険でなければならないのである。
近ごろでは、au損保の「100円自転車保険」(9月30日販売終了)、三井住友海上の「自転車ライフ」など、いろいろな商品が販売されるようになっている。「100円自転車保険」なら月々たった100円の保険料で、自転車に関わる事故は1000万円まで補償される。ほかの商品も保険料はそれほど高くないので、一考する価値はあるだろう。
また、自転車事故における高額賠償判例が出始め、個人賠償責任補償額の大きい商品に対するニーズが高まったことを受け、au損保は10月に「あうて 『じてんしゃBycle(バイクル)』」というプランを発売。自転車事故によるケガ等には2倍の保険金が支払われる点や、加害事故の場合の示談代行サービスなどが特徴だ。
●自転車事故以外もカバーする個人賠償責任保険
このように自転車保険でもいいのだが、もっとお勧めしたいのは「個人賠償責任保険」だ。個人賠償責任保険は、保険料が安いのに補償額は大きい。例えば、保険期間3年で保険料が5500円、補償金額が1億円というものもある。重大な事故の場合は、補償金額が1000万円では足りない。年間の保険料で考えれば、100円自転車保険とほぼ同じであるにもかかわらず、補償は10倍もついているのだ。
そして何より、カバーできる範囲が驚くほど広いことが特徴である。偶然の事故によって他人にケガをさせたり、他人の物を壊した場合に補償されるのだが、加入者本人だけでなく、家族やペットにまで適用される。
・自転車に乗っていて、他人にケガをさせた。
・飼い犬が他人にかみついた。
・飼い猫がよその車に傷をつけた。
・買い物先で過って商品を壊した。
・テレビアンテナが倒れて、他人にケガをさせた。
などなど、すべて個人賠償責任保険の対象に入る。つまり、こちらのほうが本当はお得なのだ。この保険は、自動車保険や火災保険(住宅総合保険)の特約にもなっているので、確認してみるといいだろう。
ただし、個人賠償責任保険はあくまでも他人への賠償が基本で、自分がケガをした場合には補償されない。その点、自転車保険は自分が負傷した際の補償もついており、どちらを選ぶかはお好み次第である。もっとも、保険があるからと安心せずに、安全運転を第一に心がけてほしい。
(文=長尾義弘/フィナンシャル・プランナー)