ブラック企業は今すぐ辞めないと、人生でこんなに大損失を!?
(宝島社/別冊宝島編集部)
●ブラックなコンビニでアルバイトをすることに
随分昔の話になるが、アルバイトで、しかもごく短期だが、ブラックと言って差し支えのないお店で働いたことがある。そのお店はコンビニエンスストアのフランチャイズ店だったが、初日からアルバイトの先輩におかしなことを言われた。「ウチのお店って1週間でやめる人とか普通にいるんですよね。なので、できれば長期で働けるように頑張ってください」
この時点で嫌な予感がしたのだが、予感は的中した。まず始業前と休憩中、そして就業後、全部あわせると一回の勤務で30分以上の時間外業務が、すでに仕事の流れに組み込まれている。「サービス残業って、正社員がやるもんじゃなかったんだ……」と驚いたことを覚えている。
当然人が居着かず、常に少ない人数で仕事をやっているので、まったく仕事が終わらない(ひどい場合は私1人しかいないシフトも)。店内も掃除は行き届かず、品出しもちゃんとできていなくてボロボロだ。場所が良いので客は来るが、そのお店の価値はそれだけだった。
「人が少ないんだから仕方ない」と経営者もあきらめているのかと思いきや、そういうわけでもなく、バイト歴1年以上でそのお店では「ベテラン」の人でも、細かな部分で厳しく叱責されていた。よっぽど暇なのか、友達がいないのか、長時間の叱責は毎度のことだった。バイトの質が低いと口癖のように言っていたが、この環境で質の高い人材が残ると思っているのが不思議でしょうがなかった。そしてレジで1円でも誤差が出ると、全額バイトの負担となっていた。
そんな状況なので、いつもピリピリしているアルバイト店員もいた。新人に当たり散らすバイトリーダーのせいで、自分が在籍している短いあいだに、入ってすぐに辞める人が数人いた。
●ブラック企業で思考停止する人たち
周りの人に「なんで辞めないんですか?」と聞いても、あまり明確な答えは得られなかった。「辞めると生活できないでしょ」とも言われたが、社員ならまだしも、バイトにもかかわらずほかで働くという選択肢が頭にないようだった。「休憩時間や時間外に働かされてもおかしいと思わないのか?」と聞くと、「仕事が終わらないから仕方ない」と言う。「いや、それは違うでしょう」と言いかけてやめた。
ブラック企業で辞めずに働く人の思考停止状態というのは、こういうものなんだなと、ある意味で勉強になった(当時はまだ、ブラック企業という言葉はなかったが)。残っている人は「2000円くらいの時給を払ってもいいのでは」と思うほどバリバリ働いている人ばかりだったが(どう考えても、1人で2人分以上働いていたので)、明らかに心を病んでいそうな人もいた。
自分は現在、個人事業主として独立して働いているくらいなので、理不尽を通り越して違法な環境で黙々と働くほど従順でもお人よしでもない。そのアルバイトも、働き始めてから1カ月後には「辞める」と経営者に伝えた。議論するのも面倒なので、体調が悪いとか資格の勉強が忙しくなったとか、何か適当な理由を伝えたと思う。その時に経営者からは、松下幸之助の本に書いてあるような立派な人生訓と一緒に、「自分に甘えるな」といった意味不明な説教を受けたことは覚えている。「違法状態で働かせて文句を言わないバイトに甘えてるのは、お前だろう」と言おうと思ったが、給料を払わないなどと言われたら面倒なので、適当に流した。
今思い返しても笑える話だが、このなんとも恥ずかしい経営者は、冒頭の記事の経営者とはさぞかし話が合うに違いない。これが自分の唯一のブラック企業(?)での勤務経験だ。