子どもの頃、実家のタンスや教科書に落書きしてしまい、親や先生に怒られた経験はないだろうか。そんな幼少時の記憶からか、多くの人は「落書きはいけないこと」という固定観念にとらわれているはずだ。
そこに目をつけたのが、文房具メーカーのぺんてるである。東京都内で20店舗以上の飲食店やバーを展開する日比谷Barとタッグを組み、「GINZA RAKUGAKI Cafe & Bar by Pentel」を期間限定(2月4日~3月31日)で銀座にオープン。連日、国内外からの客で大盛況となった。
なぜ、大人たちは「落書き」に惹きつけられるのか。実際に、この“らくがきカフェ”を訪れてみた。
若い女性が殺到…人気の理由は「背徳感」?
店の壁、テーブル、椅子、さらには床に至るまで、そこには訪れた人たちによる落書きがギッシリと描かれていた。らくがきカフェのオープンは、2014年6~7月、15年9~10月に続いて3回目だ。今回はらくがきを研究する「RAKUGAKI FACTORY」がコンセプトだという。
店内を見わたすと圧倒的に女性客が多く、男性である筆者は完全に浮いている状態だった。
盛況の理由について、仕掛け人の1人である、ぺんてる経営戦略室企画課長の内田傑雄氏は、「落書きをする背徳感を感じた後の『好き勝手に絵を描ける』という開放感が病みつきになるんです」と種明かしをする。「やってはいけないことを思う存分にできる」という状況は、現代人にとっては最高のストレス解消になるのだろう。
そして、盛況ぶりとともに驚かされたのが、前述したように客のほとんどが女性だったことだ。
「昼はお子さんを連れた家族客も来ますが、客層の95%は女性です。いわゆる『女子会』での利用も多く、春休みの時期は女子高生や女子大生にもたくさんお越しいただきました。落書きというコンセプト以前に、女性はカフェに対しての興味が強いのだと思います」(内田氏)
実際、メニューには女性向けにユニークな仕掛けが施されている。たとえば、オリジナルドリンクひとつをとっても、画材の瓶容器を模したジャーに入ったパイナップルとオレンジのカクテル「ポスターカラードリンク」(880円、税別/以下同)、ピーチ味ベースでバニラアイスとナタデココが入っていて、見事な青色の「修正液ソーダ」(880円)といった具合だ。
修正液ソーダ
料理も、人気だったのは、食べられる消しゴムやクレヨンが乗った「カラフルおつまみセット」(1500円)。消しゴムの正体はクリームチーズに色付きの食用ペーパーを巻いたもので、クレヨンはチョコレートでできている。
「リアルさを追求した見た目にも楽しいメニューが、お客様のインスタグラムやツイッターなどで拡散され、『ぺんてる、ヤバい!』と、より話題を呼ぶことにつながりました。海外のマスコミからも問い合わせがきました」(同)