元国税局職員で現在お笑い芸人の「さんきゅう倉田」です。好きな言葉は「増税」です。
国税局や税務署には、税務調査という、個人事業者や法人のところへ行って帳簿などを確認する仕事があります。もっともやりがいがあり、奥の深い分野です。その税務調査の現場で、どんなやりとりが繰り広げられているのかについて紹介したいと思います。
まず、調査対象者のもとに電話がかかってきます。
調査官「税務調査をしたいのですが、ご都合のよろしい日はありますでしょうか?」
対象者「時間はどのくらいかかりますか?」
調査官「9時から17時で2日間を予定しています」
このような定番のやりとりが行われ、調査をすることになります。調査は、正当な理由なく拒否することはできません。調査当日は、よれよれのスーツを身に纏った調査官がやってきて、「質問検査章」を見せてから調査が始まります。
冒頭、応接室や会議室に腰を据えて世間話をします。「今朝の日経新聞の記事、驚きましたね」「お子さんは習い事とかをしていますか」といった他愛のない話をします。しかし、他愛のない話と見せかけて実は調査官は情報を集めています。どんな支出があるのか、愛人はいるのか、金遣いは粗いのか、納税モラルはあるのか――。さりげなく情報を引き出し、対象者に1時間ほど気持ちよく喋らせたら、いよいよ帳簿・書類を見せてもらいます。
帳簿・書類とは、売上帳、損益計算書、貸借対照表、領収証、請求書などを指します。簡単にいうと、業務で使用する書類すべてです。あれは見せない、これは見せない、などと拒否することはできません。調査が長引いたり、疑われて追及が厳しくなるだけです。
調査官は、帳簿・書類を見ながら疑問点を尋ねたり、事務所内や関係各所を確認して調査を進めていきます。後日、取引先に電話をかけたり訪問して、あなたの用意した帳簿・書類と矛盾がないか確かめることもあります。これを反面調査といいますが、通常の事業形態であれば、取引先に反面調査をされて喜ばしいことはありません。対象者が調査に非協力的であった場合、反面調査が厳しくなることもあるでしょう。この点でも、調査を受けた場合は調査官と良好な関係を築くことが得策といえます。