5月17日付朝日新聞は、学校法人加計学園が計画する国家戦略特区における獣医学部設置計画をめぐり、特区を担当する内閣府が文部科学省に対して、「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」などと伝えたと記録された文科省の文書が存在すると報じた。文書には文科省および首相官邸の幹部の名前も明記されているという。加計学園の加計孝太郎理事長は安倍晋三首相と親しい人物であり、安倍首相夫人の昭恵氏は同学園が運営する認可外保育施設「御影インターナショナルこども園」の名誉園長を務めている。
この問題については3月13日に福島みずほ参議院議員が予算委員会で質問していたが、そのとき安倍首相は関与を否定し、さらに「国会で実名や学校の名前を出して責任を取れるのか」などと感情的に反論した。
また、菅義偉官房長官も17日の記者会見で「総理から一切指示はない」と報道を否定。さらに19日には松野博一文科相が会見を行い、問題となっている文章は存在しないとの調査結果を報告し、「これ以上の調査は必要ない」と幕引きを狙ったが、野党は今後、国会で厳しく追及していく姿勢をみせている。
この問題は、永田町ではどのようにみられているのか。国会議員秘書のA氏は次のように語る。
「民進党・玉木雄一郎議員は朝日と同じ資料を入手したので、知り合いのマスコミ関係者を集めて、注目される環境が整ったところで、文部科学委員会で質問しました。委員会には事前に内容を詳しく通達していなかったようです。おそらく、以前から多少は加計学園に関して質問していたはずですが、大きな問題にはなりませんでした。19日に衆議院法務委員会で共謀罪法案が通過しましたが、このまま本会議でも通るでしょう。民進党はこの法案で攻め手を欠いており、点数を稼ぐためにも与党への攻撃材料がほしいという事情もあります」
文科省から流出したとされる内部文書だが、17日時点では、作成日時が記されていないことなどを理由に、菅義偉官房長官は「怪文書みたいなもの」と一蹴していた。しかし、翌18日には、日付・時刻や出席者入りの文書の存在が浮上したが、それでも政府は「信憑性は定かではない」と立場を変えなかった。A氏は経験的に「本物だと思う」と話す。
「官僚は打ち合わせをするときは必ず、ああいうメモを作成して記録として残します。ただ、それは自分たち用のメモなので、公的な文書なのかといわれれば違います。あの書き方は、公文書として決済を取るようなものではありません。文科省は文書の信憑性について『確認できなかった』との見解を示していますが、証明責任は民進党側にあるので、作成者を特定できなければ、このままあの文書をもとに政権を追及するのは難しいと思います」