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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

北朝鮮ミサイル開発を支える、中国の巨額「衣料品」密貿易マネー…経済制裁でも打撃なし

文=相馬勝/ジャーナリスト

新興富豪層「金主」

 中国では1980年代から90年代には、中国の安い労働力を使って国内で製造していたのだが、いまや中国人従業員の給料が高くなり、生産コストが高くなったため、採算が合わなくなっている。

 だが、北朝鮮労働者の場合、中国人労働者の生産コストの4分の1で済むことから、丹東に拠点を置いている数十社のアパレル卸問屋は北朝鮮の会社に衣料品の製造を依頼しているという。

 大連など他の地域のアパレル関係企業も北朝鮮の製造企業に発注したいところだが、「北朝鮮の会社は1年以上先まで生産スケジュールが埋まっているため、注文を断られた」というほどの繁盛ぶりだ。

 丹東の企業関係者によると、北朝鮮国内では大手繊維会社が15社、中堅繊維業者は数十社が稼働しており、製造業労働者の最低賃金(月額)は75ドル、平均月収は170ドルと中国のほぼ4分の1だという。

 しかも、これらの業者は北朝鮮の新興富豪層「金主(トンジュ)」と呼ばれる市場経済主義者で、朝鮮労働党幹部に賄賂を渡してビジネスを行い、非合法な自由市場で経済活動を行っている。その賄賂の一部が金正恩委員長ら金ロイヤルファミリーにも流れているというのである。そのような闇の資金が回りまわって、核や弾道ミサイルの開発資金になっているというわけだ。このため、いくら国連安保理が厳しい対北制裁を採択しても、北朝鮮はびくともしないという図式だ。

 これらの悪循環を断つには、中国政府が丹東などの衣料品卸問屋への取り締まりを強化しなければならないが、これらの繊維製品の貿易は表の貿易統計には表れてこないため、取り締りようがないというのが実態だ。中朝両国の闇経済が機能し続ける限り、北朝鮮の核・ミサイル開発は止まらないのである。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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