北朝鮮ミサイル開発を支える、中国の巨額「衣料品」密貿易マネー…経済制裁でも打撃なし
中朝国境の町、中国遼寧省丹東。鴨緑江をはさんで、対岸は北朝鮮の新義州だ。丹東だけで、中国の対北貿易全体の70%以上を占めるという中朝貿易の重要拠点となる。ついさきごろ、筆者は取材のために丹東を訪れた。
鴨緑江に架かる約1kmの鴨緑江大橋には荷物を満載した中朝双方のトラックがひっきりなしに行き来していた。国連安全保障理事会が8月初め、これまでにないほど厳しい対北制裁を決議したが、制裁の対象ではない品目はフリーパスで税関を通り抜けている。とはいえ、北朝鮮の貿易量の9割は中国が相手だけに、必然的に北朝鮮の外貨の獲得先は中国となる。
北朝鮮は今年に入って10回以上もミサイル発射実験を行っており、その実験費用だけでも推定で40億円にも達するとみられている。ところが、今年3月から北朝鮮の輸出額の3分の1を占める石炭などの対中輸出が全面的に禁止されているのに、約40億円もの外貨をどのようにして稼いだのか。
丹東の中国筋が明らかにしたところによると、「メード・イン・チャイナ(中国製)」のマークが入った衣料品はほとんどが北朝鮮国内で製造されており、その輸出額だけで約30億ドルにも達しているというのだ。これは、中朝間の貿易統計に表れない額で、ほとんど密貿易に近い。北朝鮮の正規の統計に表れる年間輸出額は約29億ドルだけに、同等の額をアンダーグランドの密貿易で稼いでいることになる。
実は、丹東がその密貿易の最大の拠点なのである。もともと丹東は衣料品販売会社が集中しており、ここから日本やアメリカ、東南アジアや欧州など世界各国に大量の衣料品が輸出されている。ところが、丹東の衣料品販売会社は北朝鮮の会社に衣料品製造を丸投げしており、それに「メードインチャイナ」のタグをつけて、世界中で販売しているというのだ。