米労働経済学者ダニエル・S・ハマーメッシュの著書『美貌格差』をご存じだろうか。同書によると、容姿の美しさに伴う生涯収入の格差は最大2700万円になるという。見た目が、企業業績、選挙の結果、融資の条件、寄付金集めなどにも影響するというのだ。
筆者は、美貌格差には賛同しないが、外見は内面を表すという考えは一理あると感じている。たとえば、アメリカでは過度の肥満は自己管理ができていないとの印象を与えるとして、ビジネスパーソンがダイエットに励むことも多い。日本でも、就職活動などで外見が与える影響は大きい。
実のところ、表立って口に出さなくても、我々は外見が大事であることを認識している。“デキる男”は、こういった現実を認識し、外見を整えることに力を割いている。
筆者は、仕事を通じて、さまざまな職種の男性に会う機会がある。どの分野でも、活躍している男性に共通しているのが「デキる男は美しい」という点だ。しかし、筆者のいう美しさとは、決して美貌ではなく「身嗜みを整えている」という意味だ。デキる男たちの多くは、髪やヒゲを整えることはもちろん、肌の手入れなどにも気を遣っている。
筆者が知る限りでも、メンズエステティックに通っている男性がいる。その理由を聞くと、次のように説明された。
「汗をかくとかゆくなるなど、ムダ毛が不快なので腹部の脱毛に通っている」(30歳会社役員)」
「一部だけ口髭が濃く、清潔感に欠ける印象になるのを避けるため脱毛した」(30歳サービス業)」
このように、最近は気軽にメンズエステに通う男性が増えているように感じるのだが、実際にはどの程度、一般的なものとなっているのだろうか。エステ業界最大手のTBCグループに話を聞いた。
メンズエステに行くキッカケは?
男性がエステに行くのは、やや勇気がいるのではないかと想像するが、そうでもないようだ。
「彼女や奥様からお勧めされたのがきっかけでいらっしゃる方や、実際にメンズTBCをご利用になったお客様のご紹介で来店する方も増えています」(TBCグループ広報室・保坂悠佳氏)
つまり、メンズエステが広まった陰には、妻や彼女の後押しがあったといえる。
「ご夫婦やカップルで、または友人同士でエステに行っていることを共有できるくらい、エステが身近なものになってきているのではないでしょうか。また、モノを持つより、コトへの関心が高まっており、利用意向は高まっていると感じます。実際に、メンズTBCの来店者延数も増加しています」(同)
女性の場合でも、エステに行く際には信頼できるエステを選ぶために、友人からの紹介を受けることも多い。まったく知らないエステにいきなり行くのは勇気がいるので、利用者にとってもエステ側にとっても、「紹介」は便益といえるだろう。