6月1日、大手企業の面接・選考活動が解禁された。とはいえ、これは日本経済団体連合会(経団連)に加盟する企業の話で、中小企業などの非加盟企業では、すでに学生の選考が進んでいる。また、解禁日に内定を出す大企業も続出しているようだ。
リクルートキャリアによると、2018年春卒業予定の大学生の6月1日時点の就職内定率(速報値)は61%で前年比9.7ポイント増。また、リクルートワークス研究所によると、同じく18年春卒業予定の大学生の求人倍率は1.78倍で09年卒以来の高水準だという。
「空前の売り手市場」といわれる学生有利の就職戦線で、何が起きているのか。キャリアデザイン研究所代表取締役社長で就職コンサルタントの坂本直文氏に話を聞いた。坂本氏は、就職に関する多数の著書を上梓しており、全国80の大学で就職対策の講義を行っている。一方では、企業の面接官研修の講師を務めており、学生側と企業側の両面の事情に精通している人物だ。
9割の企業が「経団連のルール守られてない」
――経団連の指針による選考活動の開始日である6月1日の時点で、内定率はすでに61%。就職活動の実態について、まずは企業側の事情から教えてください。
坂本直文氏(以下、坂本) 企業は優秀な学生を早く採るために、実質的にインターンシップを利用するかたちで採用活動を行っています。3年生の夏・秋・冬とインターンが続きますが、この時期から選考目的で学生に接触しているのが実態です。
もちろん、建前では「インターンは採用活動とは無関係」ですが、インターンに参加した学生を早くから囲い込むために、経団連に加盟する上場企業でも3~4月に内々定を出しています。
経団連の新卒採用に関するアンケートでは、経団連が定める採用活動の日程について、9割の企業が「守られていない」と受け止めています。経団連は指針で「3月に会社説明会、6月に採用面接を解禁」と定めていますが、それがすでに形骸化していることは明らかです。逆にいえば、「経団連の指針を守っていては、優秀な学生を採れない」ということを、企業側はよくわかっているといえます。
そのため、就活が早期化し、同時に長期化しているのが現状です。
――就活の長期化とは、どういうことでしょうか。
坂本 近年のトレンドとして内定辞退者が数多く出るため、企業は夏採用、秋採用だけではなく、場合によっては冬採用も余儀なくされています。優秀な学生は大手企業6社から内定を得たりするのですが、それは同時に5社は辞退するということを意味します。
企業は、ほしい学生にはすぐに内定を出しますが、人事担当者がやきもきするのは6月1日。その日の選考会に学生が来てくれれば“本命企業”というわけですが、来てくれなければ辞退される可能性が高い。そして、辞退された企業は、さらに採用活動を続けざるを得なくなります。
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