――学生を満足させる“お声がけ”とは、どのようなものでしょうか。
坂本 たとえば、学生から質問を受けたときに「いい質問だね。うちに向いているよ」と一言付け加えれば、学生は「この会社は自分のことを大事にしてくれそうだ」と、目に見えない部分で評価を上げるでしょう。
ある企業では、学生には社員が必ず“笑顔で丁寧にあいさつする”ことが社長命令で決められていますが、これも学生の承認欲求や自己有用感を高め、当社を就職先に選んでもらえるようにすることが目的です。
また、今は“待合室面接”を行う企業も増えています。要は待合室から面接が始まっているということなのですが、たとえばある企業では、年が近くて話しやすい社員が面接の前後に学生を励ましたりねぎらったりします。そこでポロッと出る本音も、選考の材料にされているわけです。
これまでの待合室面接は、企業が隠れて学生を観察するという意味合いが強かったのですが、最近は逆に、学生に“擦り寄る”という意味でも利用されています。学生に企業のファンになってもらうために、優しい言葉を投げかけたりアフターフォローをしたりして、少しでも印象をよくするわけです。若手社員が学生につきっきりで対応し、「ぜひ一緒に働きたい」「君の成長をともに実感したい」と語りかけるようなケースもあります。
ちなみに、ある大手航空会社はOB・OG訪問をした学生に手紙を渡しています。「一緒に働こう」などといった応援メッセージが書かれているのですが、その手紙をもらった学生は、誰もが羨むような大企業の内定を辞退し、その企業に客室乗務員として入社することを決めました。この大手航空会社の場合は、企業全体の方針として学生を大事にしています。
バブル時代と違って、今の企業は採用にお金をかけることはできません。そのため、いかにお金をかけずに戦略的な採用を行うことができるか。これが、命題となっています。
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