月1回ペースの本連載も、気がつけば開始から1年半になりました。いつもネタがないと苦しみながらも、打ち切られずによく続いてきました。ネットメディアの最大の利点でもあり残酷な点として、読者が何に興味を持っているのかがわかるという点があります。
聞くところによると、最近は「出世」に関するトピックはあまり読まれないそうです。いろいろなとらえ方があると思いますが、筆者の感覚では、出世というとなんとなく日本社会の“じとっと”した側面を象徴する社内政治のようなものを想像させ、それが特に若年層の読み手にとっては興ざめな内容を連想させることがあるのではないかと思います。
一方で、「できる人が毎日やっている●つの~」など、自己啓発的な内容やスキル向上にかかわるトピックは書店でも大きく棚が取られ続けるなど、一定のプレゼンスが続いているようです。自分のスキルをアップさせることに興味はあるものの、その結果として築く自分の居場所や給料については、社内という枠だけではなく社外でも構わないといった具合にとらえているのでしょうか。
実は筆者は2桁回数に迫るほど転職した経験があります。ベンチャー企業はほとんどなく、日本の古い文化を大なり小なり引き継いでいる会社ばかりだったので、転職に関連することはいろいろ経験をしてきました。そこで今回からは、そんな転職について、ひいては人が働く場としての会社について述べていきたいと思います。
ただ、転職と一言で言っても、それを意識するに至るまでには人それぞれの理由があります。そこで本稿では、「今働いている会社における自分の仕事が物足りなかったりつまらなかったり、会社の将来が漠然と不安だったりと、将来を考えたときに漠然と不安を覚えた」状況を想定し、何から行動に移せばよいのかということを切り口にしたいと思います。なお、インターネット関連など新興企業が主流プレーヤーである業界のように、人材の流動性が高い業界は対象としていません。
まずは社内で自分が希望する仕事がないかを考える
転職に思いを巡らせたとき、会社に頼らず専門的なノウハウを身につけることで、どの会社や業界でも働いていけるようなスキルを身につけることが重要だと考える人が多いでしょう。スキルを身につけることになんのマイナス要素もなくプラス要素ばかりなのでもちろん正しいと思いますが、その目的は社外に出ることが最初にくるのではなく、まず社内で仕事の機会を広げたり深めたりすることを考えるべきです。もちろん、何か特殊な制約がないことが前提です。