メガバンクを中心に預金口座維持手数料を徴収する検討が行われている。1月18日に平野信行・全国銀行協会会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は会見で「手数料のかたちは理屈としてはあり得る。お客さまにとっての価値を十分考えた上で今後も検討する」と新たな手数料を検討していることを明らかにしている。
この問題が急に脚光を浴びてきたのは、昨年11月29日の中曽宏・日本銀行副総裁の講演がきっかけだった。中曽副総裁は講演のなかで、「適正な対価を求めずに銀行が預金口座を維持し続けるのは困難になってきている」と述べた。日銀が続けるゼロ金利政策により、利ざや(貸出金利と預金金利の差)が縮小し、収益が厳しくなっている銀行を慮った発言だが、これは銀行界にとって「渡りに船」だった。
銀行の手数料問題は、古くから検討されている。しかし、「顧客から手数料徴収を検討していることが明らかになること自体、顧客から批判を浴びたり、顧客離れにつながる」(メガバンク関係者)ことから、常に水面下で検討されている。あるメガバンク幹部は、「こんなに堂々と口座維持手数料の検討ができるようになるとは」と驚く。
銀行関係者の間では、「日本ではサービスは無料という考え方が定着している。サービスを有料にするのは難しい」という認識は強い。海外ではチップは当たり前。サービスに対しては対価が求められる。より質の良いサービスを受けようとすれば、チップや手数料も高額になっていく。日本人も海外では、違和感を持たずにチップを払っている。
海外の商業銀行は基本的に口座維持手数料を預金者から徴収している。手数料の多寡や預金残高などによって、たとえばATMの利用可能回数が決まっていたりする。商業銀行に口座をつくれば、その口座を管理し、付随したサービスを受けるための手数料が必要となるわけだ。
銀行儲け過ぎ批判
日本の銀行では、通帳1冊当たり200円印紙税がかかる。通帳を見ると、小さな正方形の印鑑のような印刷があり、そこには「印紙税申告納付につき××税務署承認済」と書かれている。この印紙税は銀行が負担している。通帳を持たないインターネットバンクでは、この印紙税分の負担はない。店舗を持ち自らのATMを設置している既存の銀行は、それだけ設備投資費用がかかっている。一方、インターネットバンクは店舗もなければ、ATMは基本的にコンビニATMの共同利用だ。コストのかかり方が既存銀行とインターネットバンクではまったく違うのだ。