空前の最高益ラッシュのなか、赤字決算の企業リスト…中国事業という「鬼門」
車の自動化、社会のIoT(モノのインターネット)化などを背景に半導体投資が活発化しており、電機業界は総じて好景気といわれる。実際に業界では最高業績を更新しているところも少なくない。しかし、そうしたなかにあって、業績悪化が続く企業もある。特に足元業績が赤字に転落するという企業さえある。赤字企業には個別の問題を抱えるケースもあるが、業界として忍び寄っている不景気の影が垣間見えるケースもある。
今回は好景気のなかで、2018年3月期を中心に直近決算の業績が赤字転落あるいは赤字継続となっている企業をピックアップした。決算確定前の企業については見込みの数字を挙げた。
中国市場における生産調整の影響
大真空の18年3月期は、期初の増収増益予想から一転、対前期比で減収となり、赤字に転落する見込み。昨年10月以降の下期に入ってから、市場環境は厳しさが出始め、さらに今年の年明け以降は一段と厳しさが増している。中国スマートフォン(スマホ)市場において生産調整の影響が出ているほか、水晶デバイスの小型化進展の遅れも響き、さらに年明け以降は為替が円高に推移していることも響く。
また、販売製品の不具合により、製品補償費用2億3,000万円を特別損失で計上することも響く。ただ特別損益としては、保有株式の一部を拠出して退職給付信託を設定し、退職給付信託設定益2億4,800万円を特別利益として計上するため、ほぼ相殺される。いずれにしても中国市場などでのスマホ生産調整の影響が直撃している。
大真空と同様に水晶デバイスを手がける日本電波工業の18年3月期も大幅赤字となる。期初には増収増益を予想してスタートしたが、移動体通信市場の減速により売上高が予想を下回るのに加え、スマホ向けのTCXO(温度補償水晶発振器)およびSAW(弾性表面波)デバイスの生産設備について、65億円の減損損失を計上することなどが利益を圧迫する。
また製品在庫についても、TCXOなどを中心に販売の可能性を検討した結果、棚卸評価損7億円を計上することになり、これも響く。ちなみに業績悪化の責任をとり、社長が50%の役員報酬を減額するほか、副社長も40%、ほかの役員も15~35%の減額を実施するなど、役員報酬カットを本年度前半6カ月間実施する。
システムソリューション、ネットワークソリューション、電子部品および電子機器販売などを行う理経も中国市場向け販売が誤算となり、赤字となる。売上高は、昨年10月に航空機・航空機器部品の販売・リース・カスタマーサポートを手がけるエアロパートナーズ(東京都中央区)を買収した寄与があり増収だが、計測関連や、防災情報分野のJ アラート受信機の補正予算による更新実施時期の遅れがあり、既存事業は伸び悩んだ。また、中国・香港向け電子部品につきユーザーサイドの在庫過多による生産調整が発生、これが大きな誤算となった。
液晶、太陽電池市場の停滞
液晶用ガラス基板を手がける倉元製作所は、液晶市場の低迷を背景に、17年12月期も赤字継続となった。これで14年12月期から4期連続の赤字で、14年には30%台だった自己資本比率も17年12月末時点ではついに1ケタの8.3%にまで低下している。売上高は2ケタ減少が続いており、前年度の54.7%減に続き、17年12月期も前年比24.8%減となった。
売上高の減少は、スマホ向けを主とする主力の液晶用ガラス基板事業において、有機ELパネルへの置き換えなどもあり需要が低迷していることが大きい。液晶市場はテレビなど大型パネルでは底堅い動きもあるが、倉元製作所は中小型パネル向けを得意としており、厳しい情勢が続く。ただ、ここにきて液晶見直しの動きが出ており、明るい兆しも見える。
田淵電機は、家庭用ゲーム機器向けのアミューズメント用電源機器(アダプタ)については受注が順調に拡大しているものの、国内太陽光発電市場向け製品の不振が長期化している。国内太陽光発電市場での改正FIT法における認証手続きの想定外の遅れのほか、パワーコンディショナ販売価格下落なども下期にも続いている。国内太陽光発電市場向け販売については「底を打ちつつある状況」ではあるが、18年3月期は赤字転落の見込み。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)