新聞業界から献金…政治家も動かない現状
では、現在の公取委の姿勢を変えることができるのだろうか。筆者は、できると思う。行政機関である以上、公取委も国会の監督を受ける立場にあるからだ。そのため、衆議院の経済産業委員会で質問をしたり質問趣意書を提出したりする方法がある。以下は、質問の一例だ。
(1)「公正取引委員会が販売店から押し紙の申告あるいは情報提供を受けた件数は何件か」
(2)「そのうち、実際に調査を行った件数は何件か」
(3)「実際に調査を行った件数のうち、実際に新聞社に対し聞き取りを行った件数は何件か」
(4)「公正取引委員会が新聞社に対して行政処分を行った件数は何件か」
しかし、ここにも問題がある。政治家は押し紙について無関心なのだ。彼らが国会で公取委の姿勢をただせば押し紙の調査と摘発が進み、結果的に新聞社に多大なダメージが与えられる。しかし、そうした事実に気付いていないのではないだろうか。もはや「公取委が押し紙という違法行為を調査し、場合によっては行政処分を行う国家組織だということを知らないのでは」とすら思えてくる。
特に残念なのは保守派の政治家だ。押し紙の実情を知る弁護士という立場から見て、新聞社が“マスゴミ”であることに異論はない。それだけに、主義主張の如何を問わずに「偏向報道をただす」と息巻く保守系政治家には期待していたのだが、彼らは威勢のいいことを言うばかりで実際には何もしていない。
押し紙が是正されれば、新聞業界は再編を余儀なくされるといわれている。販売店のなかにも、押し紙で有名な某新聞社に確実にダメージを与える証拠を持っているところはあるはずだ。しかも、押し紙は違法行為であるため「言論弾圧だ」などと反論されることもない。それにもかかわらず、政治家が傍観しているのはなぜなのだろうか。
保守派を名乗る政治家は、実際には既得権益に戦いを挑む勇気がないのかもしれない。新聞業界から与党政治家への献金も確認されており、「保守政治家と新聞は、いわばプロレスのような関係か」と勘繰りたくもなる。支持者の手前、新聞も政治家も表向きは激しく言い争うが、実際は相互依存のような関係になっており、決定的な衝突は避けているように見える。
先述した通り、販売店から申告を受けても公取委が調査をしない現状がある。そうした実態について、政治家が公取委に対してヒアリングを行い積極的な対応を迫ることが、押し紙を是正するための一助になることは明らかだ。