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「面倒」と不評のゾゾスーツ、服を買ったらサイズが…「ユニクロのほうが手軽」との声も

文=A4studio
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「面倒」と不評のゾゾスーツ、服を買ったらサイズが…「ユニクロのほうが手軽」との声もの画像1ZOZOTOWN HP」より

 ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが昨年11月、「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」と名づけられた採寸用ボディースーツを発表したのは記憶に新しいところだろう。

 この初代ZOZOSUITには伸縮センサーが内蔵されており、着用者は、スマートフォンとBluetooth通信をするだけで身体を瞬時に採寸できた。その近未来的な性能とデザイン、さらには希望者に無料配布という同社のプロモーション戦略もあいまって、これまでに100万件以上の注文を集めている。

 しかし、初代がきちんと配布されたのは注文者のうちの一部らしく、多くの注文者から「いつまでたっても届かない」という不満の声が噴出。初代ZOZOSUITは大量生産するのに不向きだったようで、4月27日に開かれた同社の2018年3月期決算説明会において、新型ZOZOSUITが披露されることとなった。

 スタートトゥデイ社長の前澤友作氏は、この日のうちに約4000枚の新型ZOZOSUITが出荷され、注文者への配送は7月中旬までに完了する見通しだと明かしたが、物議をかもしたのは新型の仕様変更についてだ。

 ネット上で「『GANTZ』(奥浩哉氏の漫画作品)みたい」などと好評だった初代ZOZOSUITのスタイリッシュなデザインは見る影もなくなり、新型では、全身に数百個もの水玉模様(=ドットマーカー)が施されている。センサーを撤廃した代わりに、水玉模様をスマートフォンのカメラで360度、合計12回読み取って採寸するのだが、初代よりも煩雑になった感は否めないだろう。

 当然、新型ZOZOSUITならではのメリットもある。初代と違い電子部品を使っていないため、電池切れやBluetoothの接続不良といった問題は起こり得ないし、洗濯も可能だ。新型は1枚あたり約1000円でつくれるとのことで、コストダウンにも成功している。

 とはいえ、“新型ZOZOSUIT=初代の廉価版”という見方もできてしまう。果たしてスタートトゥデイの挑戦はうまくいくのだろうか。

『おしゃれが苦手でもセンスよく見せる 最強の「服選び」』(大和書房)などの著書があり、これまで3000人以上にファッション指南をほどこしてきた実績を持つスタイリスト・大山旬氏に話を聞いた。

採寸は時間も手間もかかるのがデメリット

 まず、新型ZOZOSUITの第一印象を、大山氏は次のように語る。

「ZOZOSUITが新型に切り替わると知ったときは、初代に比べ、使うのが面倒くさそうに感じてしまったのが率直なところです。実をいうと私は昨年、初代の発表当日に予約を済ませていたのですが、ようやく送られてきたのは、新型が発表された2日後でした。届いたZOZOSUITは、初代ではなく新型のほうです。

 その後、私自身で新型ZOZOSUITを試してみましたが、やはり使い勝手の悪さを実感する結果になりました。3分ほどかけ、自分の身体をカメラで360度、合計12回も撮影しなければいけないというのは、使用者のモチベーションが高くないと、かなりの手間に思えてしまうのではないでしょうか。

 そして、デザインの質も初代より完全に落ちています。機能上、あの水玉模様は仕方ないのでしょうが、気恥ずかしくなってしまう男性は多そうですね。ネタとしておもしろがって使える人ならともかく、一般の人にとってはハードルが上がってしまったのではないかと思います。それと、新型は初代と違って洗濯できるということをひとつのウリにしていますが、そう何度も洗って着るようなものではないですし、1回着たら次は半年から1年は出番がないでしょう」(大山氏)

 ほかに気になるのは、ZOZOSUITによる採寸の精度だ。というのも、スタートトゥデイは今年1月、ZOZOSUITの採寸データを元に商品をオーダーメイド可能なプライベートブランド「ZOZO(ゾゾ)」を発売しているのである。

 5月上旬時点では「クルーネックTシャツ」(1200円/税込、以下同)と「スリムテーパードデニム」(3800円)の2点がラインナップされており、初代ZOZOSUITの利用者の半数が、これらの商品を購入しているとのこと。しかも、今まで返品交換は0件だというから驚きだ。ZOZOSUITとZOZOの連動を、大山氏はどうとらえているのか。

「ZOZOSUITの採寸データがどれくらい正しいのか、人の手で採寸するよりも誤差が少ないのかについては、正直なところ判断がつきません。もちろん私も、今までにオーダーメイドのスーツやシャツをつくったことはありますが、その際の採寸データが手元に残っておらず、ZOZOSUITと比べられないのです。

 そこで、ZOZOのTシャツとデニムを私もさっそく購入してみました。着てみた感想としては、まずまずといったところでしょう。ただ、私はファッション業界の人間ですので、ユニクロの安価なTシャツを着ることもあれば、4~5万円するようなデニムを履くこともあるわけです。それらと比較し、ZOZOのオーダーメイド商品がベストかと聞かれたら、そうは言い切れないですね」(同)

強みは、普段着をオーダーメイドできる点?

 ZOZOの着心地や品質について、大山氏は引き続き持論を述べる。

「例えばZOZOでデニムをオーダーメイドする際は、最初に『ウエストは○cmが最適です』と提示され、そこからプラス○cm、マイナス○cmと、自分好みに調節できます。私はZOZOのおすすめ通りに注文しましたが、届いた商品を着用してみると、デニムはもう少しウエストがタイトなほうが理想的で、Tシャツは若干大きく感じました。何も設定をいじらずに注文すれば満足できるかというと、必ずしもそうではないということです。

 とはいえ、服のサイズ感には人それぞれ好みの問題があります。実際はZOZOのオーダーメイド商品も、大多数の人にとっては程よいサイズ感に仕上がっている可能性が高いでしょう。Tシャツが1200円、デニムが3800円というのは、ユニクロクラスのファストファッションブランドと同程度ですし、この価格帯にしてはクオリティー的にまったく問題ありません。むしろ、優れているくらいです。

 もっとも、ファッションが本当に好きな人や、いろいろと経験を積んできた人からすれば、ZOZOのオーダーメイド商品も『そこまでではない』という評価に落ち着いてしまうのではないでしょうか」(同)

 そんなZOZOSUITとZOZOは今後、ファッション業界でどのような立ち位置になっていくのか、推測してもらった。

「前澤社長は将来的に、ビジネススーツやドレスシャツ、ワンピースのオーダーメイドにも踏み込んでいきたいと語っていました。このように全方位的な展開になると、おもしろみは次第に増してくるでしょう。ここ1~2年間で、スーツなどのオーダーメイドはオンラインで完結できるようになってきましたから、そのようなサービスを利用している人にとって、ZOZOSUITとZOZOは魅力的なはずです。

 また、Tシャツやデニムといった普段着となる私服はスーツと異なり、普通はなかなかオーダーメイドできません。新型ZOZOSUITは、初代が登場したときのインパクトに比べ失望感が強いのは確かでしたが、今はまだ類似サービスがないので、服のサイズ選びに悩みを持っている人々には一気に広がっていきそうな予感もします。

 逆にいうと、サイズを難なく選べてしまう人にとってはユニクロなどで服を買うのとそこまで変わらないため、あえてZOZOSUITで採寸する必要があるのかどうかは疑問です。ユニクロの品質は決して悪くないですし、同じようなTシャツとデニムが欲しいなら、ユニクロに行ったほうが手軽だと感じます。

 しかしZOZOSUITを使った採寸は、新しいものやガジェットが好きな人であれば非常に楽しめるだけでなく、体験代としても安いのではないでしょうか」(同)

 ZOZOSUITとZOZOは、まだまだ使う人を選んでしまうのが現状のようだが、その一方、前澤社長は「採寸データが何十万件、何百万件とサーバーに集まり、分析や研究が進めば、水玉模様のマーカーはもちろん、スーツを着る必要さえなくなるかもしれない」という旨の発言も残している。スタートトゥデイがZOZOSUITに関するビジネスを今後どう発展させていくか、今後も注目していきたい。
(文=A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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