中古本チェーン最大手のブックオフコーポレーションが、3期連続で最終赤字を計上した。
同社が5月10日に発表した2018年3月期の連結決算は、最終損益が8.8億円の赤字だった。17年3月期は11.5億円の最終赤字、16年3月期は5.2億円の最終赤字を計上していた。
同社の展開する中古本・中古家電販売店「ブックオフ」は、店舗数が激減している。10年3月期には1100店以上を展開していたが、18年3月末時点では825店となった。8年で約300店が減ったかたちだ。18年3月期も18店純減しており、店舗数減少の流れが止まらない状況にある。
18年3月期は、不採算店の店舗閉鎖損失や早期の黒字化が見込めない大型複合店の減損損失などで12.5億円の特別損失を計上した。店舗数が減少したこともあって、売上高は前年比1.6%減の800億円だった。
全売上高の9割近くを占めるリユース店舗事業が前年比0.8%減と不調だった。既存店売上高が前年比で3.5%減ったことが響いた。客数が6.1%減と激減し、客離れが深刻な状況にある。
リユース店舗事業で主力の中古本販売の不振が顕著となっている。売上高は前年比で5.3%も減った。不振の大きな要因としては、本の買い取りの減少が挙げられる。18年3月期の仕入高は前年比で2.3%減った。16年3月期が3.5%減、17年3月期が4.9%減と減少が続いている。
仕入高が減っている理由としては、本離れや本の電子書籍化が進んでいることで紙の本の流通が減っていることが挙げられるだろう。
出版科学研究所によると、17年の出版市場は前年比4.2%減の1兆5916億円だった。電子書籍が16.0%増の2215億円だった一方、紙の本は6.9%減の1兆3701億円で13年連続のマイナスだったという。このように、紙の本の流通が減っているため、ブックオフの買い取りも苦戦しているといえる。
また、ブックオフ自身の問題もあるだろう。ブックオフで本を売る場合、1冊の査定額が10円といった“二束三文”の価格を提示されることが少なくない。もちろん、すべてがそうというわけではないが、高値で売れるのはまれといっていい。そのため、本を売る人の間で「ブックオフの査定は厳しく、安値で買い叩く」という認識が広がっている。
これは、ブックオフに明確な査定基準が存在するためだろう。この基準によって、極端に高額な査定が算出されることはほとんどない。赤字が発生しないようにするためには、買い取り価格を低く設定せざるを得ないという事情もある。
ネットを介した個人売買が普及し苦戦
一方、「ヤフオク!」や「メルカリ」など、インターネットを介したオークション、フリーマケットのサービスが近年発達しているが、こういったサービスでは買い手が主に個人のため、欲しい商品であれば多少高い金額を提示してでも手に入れようとする傾向があり、思わぬ高値で売れることも少なくない。
このようなサービスが普及したことで、「ブックオフで売るよりもネットを利用して個人に売ったほうが高く売れる」という認識が広まった。その結果、ブックオフで本を売っていた人がネット売買市場に流れていき、ブックオフの仕入高の減少につながったといえるだろう。
これは、本以外の商材にも当てはまる。ブックオフはCDやDVD、ゲーム、家電、アパレル、ブランド品など多種多様な商材を取り扱っているが、物を売りたい人が個人間のEC市場に流れたことで、以前と比べて店舗での買い取りが難しくなっているといえる。
買い取りが難しくなっているため、品ぞろえにも影響が出ている。魅力的な物を買い取ることが難しくなり、品ぞろえの充実度が低下し、それが客離れにつながっている側面もある。
個人間のEC(電子商取引)市場の発達は買い取り面だけでなく、販売面でも苦戦を強いられる要因となっている。わざわざブックオフに足を運ばなくても物が買えてしまうからだ。ネット通販のアマゾンがさまざまな小売業を駆逐しているように、ヤフオクやメルカリなども小売業を駆逐し始めている。その矢面に立たされているのが、中古販売店でありブックオフといえるだろう。
個人間のEC市場の成長はすさまじい勢いだ。経済産業省によると、17年のネットオークションの市場規模は前年比3.2%増の1兆1200億円で、そのうちの個人間取引は3.2%増の3569億円だった。また、フリマアプリの市場規模は58.4%増の4835億円で、フリマアプリが初めて登場した12年から、わずか5年で5000億円弱の巨大市場に成長している。
そういった状況もあり、ブックオフはオンライン事業を強化している。自社サイトに加え、「楽天市場」やヤフオクなどに出品している。14年4月にヤフオクを運営するヤフーと資本業務提携を結び、15年12月にはヤフオク上に「ブックオフオンラインヤフオク!店」を開設。ブックオフの店舗在庫をヤフオク上で販売し、出品数を大幅に増やしていった。17年10月にはアマゾンの仮想商店街型サイト「アマゾンマーケットプレイス」に出店し、販売を始めている。
ただ、18年3月期のオンライン事業の売上高は前年比5.9%減の61.4億円と、大幅な減収となった。本の販売が落ち込んだことが大きく影響したという。営業利益は43.8%減の2.3億円だった。
総合買い取りのハグオール事業も苦戦が続いている。東京23区を中心とした訪問買い取りサービスに加え、複数の百貨店内で買い取り相談窓口を運営するなど、積極的な買い取り策を実施したが、催事販売「東京古着」を撤退したことなどが影響し、売上高は7.7%減の20.7億円、営業損益が8.9億の赤字(前期は6.8億円の赤字)となった。
八方塞がりの感があるブックオフ。業績改善の道は平坦ではなさそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)