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垣田達哉「もうダマされない」

ホロコースト揶揄の小林氏が演出した開会式「実施は許されない」…入場行進・聖火点灯のみの案も

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
ホロコースト揶揄の小林氏が演出した開会式「実施は許されない」…入場行進・聖火点灯のみの案もの画像1
東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会

 東京オリンピック(五輪)開会式の楽曲担当、小山田圭吾氏(コーネリアス)が、過去の“いじめ自慢”問題で辞任したが、不祥事はこれだけで済まなかった。開会式を翌日に控えた今日(22日)になり、開閉会式のディレクターである小林賢太郎氏の解任が発表された。

 小林氏がお笑いコンビ「ラーメンズ」時代のコントで「ユダヤ人大量惨殺ごっこやろう」などという表現を使っていたことに対し、米国のユダヤ人の人権団体サイモン・ウィーゼンタール・センターは22日(日本時間)、「いかなる人間も、どれだけ創造的であるとしても、ナチスのジェノサイド(民族大虐殺)の犠牲者をあざ笑う権利を有していない」との抗議声明を出した。

 東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会は同日、すぐに小林氏の解任処分を発表したが、小林氏は開会式と閉会式の制作・演出チームで「ショーディレクター」を務めており、事実上、演出の総責任者といえる。

 小林氏を解任したとしても、「作品は悪くない」として彼が総合演出をした開会式を実施することは許されるのだろうか。そんな開会式を、外国の人々だけでなく日本人も喜んで見てくれるだろうか。米国のテレビ局は放送してくれるのだろうか。開会式に参加する選手たちは、黙って参加するだろうか。入場行進で、世界中に抗議の姿勢を見せるかもしれない。

 組織委の橋本聖子会長は同日の記者会見で、開会式を入場行進・聖火点灯のみに絞って開催する可能性について聞かれ、「全体を早急に見直しながら、どのようにしていくかということを早急に協議している。早急に結論を出したい」と回答しており、選手の入場行進と聖火点灯だけにするという案も出ているようだが、それだけで済むだろうか。聖火点灯は開会式の最大のイベントであり、小林氏がその演出に一切携わっていなかったとは考えにくい。「ナチスのジェノサイド(民族大虐殺)の犠牲者をあざ笑ったことのある人物が演出した聖火点灯」は、果たして世界中に受け入れられるのだろうか。

組織委の責任は重大

 それにしても、組織委は「誰が、どんな責任をもって、何をしている」のだろう。小山田氏の件では、武藤敏郎事務総長は「我々が1人ひとりを任命したのではない。仲間、気心知れた人たちでやれないと進まない。つくられた全体のグループをそのまま任命した。我々に任命責任があるのは間違いないが、我々が1人ひとり選んだわけではない」と言い、橋本会長も武藤事務総長も「任命責任は我々にある」と述べている。

 21日には、14日に組織委から発表された開閉会式4式典共通コンセプトと五輪開閉会式コンセプトに「復興五輪」の記載がどこにもなかったことについて、橋本会長は「これは確実に入るものだと思っていました」「私自身は入るものだと思っていた」と述べている。

 驚いたのは国民のほうだ。五輪のメインイベントの開閉会式はお友達が集まってつくり、世界に発表するコンセプトは、組織委会長の意向を無視して世界中に発信された。いったい組織委のトップとスタッフは、どんな意思疎通を図っていたのだろう。各々が好き勝手に動いていただけなのではないだろうか。これは、当然ながらトップの責任である。

 しかし、「私に責任がある」と言いながら、誰もなんら責任を取っていない。不祥事を起こした人物を辞任させ、責任を認めている責任者は謝罪するだけである。「五輪が開催されれば、開催以前にどんな不祥事があっても、みんな忘れて肯定的な世論になる」という意見もあるが、果たして今回の東京五輪にそれは通用するのだろうか。どう考えても、「終わり良ければすべて良し」とはならないであろう。「呪われた五輪」といわれている東京五輪、これで不祥事は終わるのだろうか。

 菅義偉首相は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、五輪について「やめることは簡単だ。楽なことだ」と述べているが、五輪中止という英断をIOCに伝えることができたのは、日本では総理大臣しかいない。

 もしも、どうしても開会式をするのであれば、橋本会長が日本人向けではなく世界に向けた記者会見を開き、さまざまな不祥事に対して誠実に謝罪し、「入場行進と演出のないシンプルな聖火点灯式だけの開会式を行わせてください」と言うしかない。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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