体操女子のリオデジャネイロ五輪(2016年)代表の宮川紗江選手(18)に対し暴力やパワーハラスメントを行ったとして、速見佑斗コーチ(34)が日本体操協会から「登録抹消(無期限)」の処分を受けたのが8月8日のこと(本人への通知は8月13日)。事態はそれから急展開してきた。
宮川選手が8月29日に反論会見を開き、逆に協会側、特に塚原千恵子女子強化本部長(70)によるパワハラを告発したのだ。協会は、第三者委員会を立ち上げ早急に調査するとしているが、速見コーチの指導がなければ競技生活を続けられないと訴えている宮川選手はどうなるのか。
アスリート側が、所属する協会側に対して勇気を出して声を上げる傾向が強まっている。それはスポーツ界における選手の選抜・選考や強化の方針にまで影響を与えていくと私は見ている。
スポーツ界に“造反有理”の風が吹き始めた。
宮原会見に対して二転した協会
宮川選手が行った会見の内容を以下に要約してみる。
・速見コーチから強い叱責指導などはあったが、数年前の出来事で自分はそれをパワハラ指導とは感じなかった。
・今回の処分は、宮川選手を、自ら指導する朝日生命体操クラブに引き抜こうとした千恵子氏の策謀と感じる。
・千恵子氏から「五輪に出られなくなるわよ」と言われたことを、パワハラだと感じた。
宮川選手のこの会見に対し、千恵子氏の夫で協会副会長の塚原光男氏は同日中にNHKの取材に対し、「やましいことはなく、発言のなかには名誉棄損に関わることもある」と述べ、反論する姿勢を示した。また弾劾された本人である千恵子氏も日刊スポーツの取材に対し「悪いことはしていないし、宮川が勝手に言っていること」と語った。
この協会の対応は、世間の常識からいえばまったく受け入れられないものだ。光男氏は千恵子氏の配偶者である。妻が弾劾されているのだから、直接の利害共有者という立場だ。協会には副会長が4人いるのだから、妻の行動が問題となった段階で、事件の取り扱いからはきっぱりと手を引くべきだった。副会長である光男氏が発言したことで、「協会のなかで夫妻が結託している」という印象を醸し出してしまった。
常識人の対応、具志堅幸司副会長
この事件では、体操ファンにはたまらないメダリストたちが続々登場する。光男氏は五輪3大会で金メダルを獲得しており、「ムーンサルト」の創始者だ。千恵子氏もメキシコ五輪に出場して入賞している。