アップル、トヨタ、ボーイング…名だたる企業たちを支える“隠れた”世界的大企業とは?
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ファナックは役員報酬1億円以上の、いわゆる“1億円プレーヤー”の役員が最も多い企業である。2013年3月期決算企業で役員報酬1億円以上の個別開示を行った企業のなかで、ダントツの13人(2012年3月期は14人)が名を連ねた。2年連続で最多開示人数だ。2位の日産自動車の6人の倍以上。社長の稲葉善治氏の役員報酬は5億9000万円(基本報酬1億9000万円+賞与4億円)で役員報酬ランキングの5位(東京商工リサーチ調べ。6月28日17時時点)。
ファナックは6月27日に開催した株主総会で稲葉清右衛門名誉会長(88)の孫で稲葉善治社長(64)の長男である清典氏(35)が取締役に選任された。最年少の取締役というだけではない。いきなり専務、常務、取締役14人をゴボウ抜きしての序列ナンバー3に大抜擢された。ポスト、善治氏=後任社長への布石といえる。
清典氏は2008年12月、米カリフォルニア大学大学院バークレイ校機械工学科専攻(博士)修了、工学博士号を取得した。帰国した09年1月、ファナックに入社、ロボット研究所四部四課主任研究員に就いた。一貫してロボットの研究開発に携わり、基本ソフト開発部五課長を経て、11年7月に学習ロボットの開発部長に就いた。学習ロボットは振動を抑えて滑らかな高速動作ができるロボットだ。今年5月にロボット研究所所長となり今回、取締役に昇格した。
ファナックは自動車などの製造現場で使われるNC装置(数値制御装置)や多関節ロボットで、国内外でトップシェアを握る工作機械メーカー。メディアへの露出が極端に少ないため世間的にあまり知られていないが世界的な大企業なのだ。
ファナックの数値制御のシステムは、鉄鋼を米アップル社のスマホ(高機能携帯電話)iPhoneの外周部品に、アルミニウムを米ボーイング社の航空機リブ(枠組み部品)へと変える。トヨタ自動車や米ゼネラル・モーターズ(GM)向けの部品供給業者(ベンダー)が使っているものも含め、コンピューターの頭脳を持つ工作機械の半数強は、ファナックの制御技術を使っている。
13年5月23日に株価は上場以来の最高値、1万7460円をつけ、株式の時価総額は一時4兆円を超えた。今やユニクロのファーストリテイリングと肩を並べる、日経平均株価に影響を及ぼす銘柄なのだ。ファーストリテイリングとファナックとソフトバンクの3銘柄が値上がりすれば日経平均は高くなるといわれるほどだ。
そんな超優良企業のファナックだが、最近の業績は停滞気味だ。2013年3月期の売上高は前期比7.4%減の4983億円、本業の儲けを示す営業利益は同16.7%減の1848億円と減収、減益となった。それでも37%という高い営業利益率をあげている。これがどれだけ凄い数字であるというと、世界のエクセレントカンパニーといわれる企業の平均の営業利益率が15%超という事実をみればよくわかる。ファナックは日本で最も利益率の高い企業であると同時に世界でも有数の高収益会社なのである。