「サウジアラビアで内戦が起きて、シリアのようになることが心配です。そうしたら日本に石油が来なくなりますよ」
そう語るのは、経済産業研究所上席研究員の藤和彦氏である。
サウジアラビアのジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で死亡した事件で、トルコのエルドアン大統領は23日、首都アンカラの国会で捜査状況を説明し、「凶悪な計画殺人だった」と述べた。カショギ氏殺害に関し、サウジに徹底した説明を求めるG7声明が出されるなど、国際的な非難の声も高まっている。
23日から25日にかけて、サウジの首都リヤドでは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の肝いりで、国際経済フォーラム「未来投資イニシアチブ(FII)」が行われた。サウジの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は、運用額10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」に約5兆1000億円を出資することで合意しており、ソフトバンクの孫正義会長兼社長はFIIで講演を行う予定だったが、取りやめた。
「今回のFIIで、サウジは560億ドルの案件が成約したと言っていますが、そもそもサウジはお金を持っていません」
こう語る藤氏に、前回に引き続き、カショギ氏殺害が世界、そして日本にどのような影響を与えるのかを聞いた。
米トランプ大統領の翻意
まず、なぜサウジに金がないか。
「サウジはイエメンへの軍事介入で、毎月50億ドルから60億ドル使っているんです。サウジの軍事費対GDP比は世界1位で、10%以上で、北朝鮮並みです。700億ドルくらい毎年、軍事費に使っています。ムハンマドさんにしたら、世界的に見て一番問題視されているのはイエメンへの軍事介入ではないでしょうか。世界最大の人道危機になっています。
これを早く終わらせたいということです。あまり報道されませんが、イエメンのホデイダという港の侵攻作戦で、今ものすごく軍隊を集中させているらしいです。これで民間のバスでも誤爆したら大変なスキャンダルになって、さすがにもういい加減にしろということになるでしょう」
当初、サウジを擁護していた米トランプ大統領も、「史上最悪の隠ぺい工作」と非難へと転じている。
「カショギ氏殺害に関するニュースがニューヨークタイムズにバンバン出ていますが、あれはCIAからのリークが多いのではないでしょうか。ハスペルCIA長官はトルコに行きましたけど、録音データを聞いているんです。それで、これは間違いなくムハンマドの指示だということを知ったと思いますトランプもCIA長官からその話を聞いたので、ムハンマドの責任に言及し始めたんです。フィナンシャル・タイムズなんかもう、ムハンマドは交代しろという記事を書き出してますから。トランプも今激怒していますよ。『なんで中間選挙の前に、こんなことやるんだ? バカヤロー!』という気分でしょうね」