ハイクラス層やスペシャリストに特化した有料の会員制転職サイト・ビズリーチを運営する株式会社ビズリーチ。これまで人材会社やヘッドハンターだけが持っていたハイクラス層やスペシャリストの求人情報を会員に公開し、求職者に幅広い情報や選択肢を提供することで、企業と求職者がダイレクトに効率よく採用・転職活動を行えるサービスを日本で初めて提供し、人気を呼んでいる。
このモデルは評判を呼び、2009年4月のサービス開始からわずか4年で、会員数は20万人を超える。登録者は、1,000人超のヘッドハンターや1,200社超の企業から直接スカウトを受けたり、企業に応募することができる。
今回はそのビズリーチのマーケティング部広報・寛司絢子氏に、
「これまで日本になかった、企業と求職者双方に多くの情報を提供し、効率よく両者を結びつけるという画期的なビスリーチの仕組みとは?」
「ビズリーチというサービス、そして企業が急成長を遂げられた秘密とは?」
「組織を活性化させ、絶えず新しいサービスを生み出せる土壌をつくるための、ビズリーチ独自の取り組みとは?」
などについて聞いた。
–貴社が運営する会員制転職サイト・ビズリーチについて教えてください。
寛司絢子氏(以下、寛司) 皆さんが転職を考えられる時、まず人材紹介会社を訪問し、キャリアコンサルタントと面談した上で、「あなたにぴったりの案件はこれです」と、限定された求人情報が紹介されるスタイルが一般的ではないでしょうか。しかし、ビズリーチの社内には、キャリアコンサルタントは存在しません。キャリアについて考えている方が職務経歴書をサイトにアップロードし、その経歴書を見た企業やヘッドハンターが「求める人材だ」と判断すれば、求職者にスカウトメールが届くという仕組みです。
もちろん求職者も、弊社が審査した7,000を超える質の高い求人情報に応募したり、1,000を超えるヘッドハンターのプロフィールをサイト上で閲覧してコンタクトすることができるので、自分が望むキャリアに関する情報収集を効率的に行うことができます。つまり、ビズリーチは求職者と企業、そしてヘッドハンターが直接出会う場なのです。ですので、私たちは人材サービス会社ではなく、インターネットの企画運営会社なのです。
–そもそも、そのようなビズリーチを始められたきっかけはなんでしょうか?
寛司 創業者である代表の南(壮一郎)が転職活動をしていた時に、20社を超える人材紹介会社を訪問し、どの会社でも「あなたにぴったりですよ」と違う求人を紹介されながら、「どうしてどの会社も、違う仕事を紹介してくるのか? 何社回れば、全ての選択肢を見ることができるのだろう?」と疑問に思ったそうです。そこから、情報収集に時間をかけずに、効率的にできるだけ多くの選択肢を探す方法はないかと考えたことがきっかけとなっています。
人材紹介会社はクライアント企業の求人のみを取り扱っており、かつ、紹介される企業は限られています。つまり、求職者に対し、全ての選択肢が提示されていないのです。ビズリーチであれば、弊社が審査した多くの求人情報、企業、ヘッドハンターがいるので、登録しておけばいろいろな企業から直接連絡が来たり、自分でも求人企業を知ることができます。つまり求職者と求人企業がダイレクトにつながることで、お互いに効率的な活動ができるわけです。
–キャリアについて考えている方は誰でも履歴書をアップロードできるのですか?
寛司 最初に弊社の専門スタッフによる審査を受けていただきます。弊社では、会員、企業、ヘッドハンターの全てを独自の基準で審査させていただいています。
–どうして審査するのですか?
寛司 ハイクラスやスペシャリストに特化した会員制サイトにするためです。弊社が審査させていただくことで、会員、企業、ヘッドハンターのそれぞれが安心して効率よく活動できます。
例えば、従来のあり方では、海外拠点立ち上げの事業責任者や、オーナー企業の後継者、財務部門長(CFO)などの要職を探す場合、企業はその求人はオープンにできず、一部のヘッドハンターだけに伝えることが多くありました。そういう一般には公開されていない情報が、会員制であるビズリーチ上にはあるわけです。
–現在、国内にビズリーチと同じサービスを提供する競合他社のような存在はいるのですか?
寛司 ビズリーチのようなサービスを総合的に提供している企業は、恐らく国内にはないのでないでしょうか。
ビズリーチは、転職を考えている方に多く利用していただいていますが、将来のキャリアアップを考えて職務経歴書をアップデートし、スカウトされて良い話であれば検討するという方もいます。海外では、「どのようなプロジェクトに関わり、どのような成果を挙げたか?」などを記載した職務経歴書を頻繁にアップデートするのが当たり前になっており、自分の経歴に対してどのような企業からスカウトメールが来るのか、どれくらいの年収で求められているのかを確認し、自分自身の市場価値を確認しています。
今後日本でも、転職の予定がない方でも、全てのビジネスパーソンが現在の市場価値を知り、何を強化すれば市場価値が上がるのか、どんな選択肢や可能性があるのかを主体的に知り、行動するきっかけになるよう、お手伝いをしていきたいです。
「何もしないのが一番悪」という企業風土が成長のエンジン
–現在経歴書を登録されている方は、どれくらいいるのですか?
寛司 2009年4月にこのサービスを開始してから、4年間で会員数が20万人を超えています。日々新しい会員が増え、企業サイドからも新しい案件が増えています。
–これほどまでにビズリーチが急成長を遂げられた要因はなんでしょうか?
寛司 やはり、もっと効率よく求職・求人活動をしたいというニーズを持つ求職者と求人企業の双方にご利用いただいていることにあると思います。
もう1つは、“加点主義”という弊社の行動指針にあるのではないかと思います。何もしないのが一番悪であり、たとえ失敗したとしてもそれはマイナスではなく、失敗したその経験はプラスであるというものです。そのため、社員全員の「よいと思うことはまずやってみよう」という意識はすごく高いですね。みんないろいろ行動し、社歴に関係なく思ったことをどんどん発言します。スピード感をもってPDCAを回す。これがこの会社の成長の源であり、エンジンになっていると思います。
それから、弊社にはそれぞれの分野を極めたプロフェッショナルが多く集まっています。ですから、主体性を持って自分で判断し、どんどん積極的にチャレンジしているので、物事を進めるときのスピード感はすごいですね。
–そんなビズリーチに寛司さんが入社されたきっかけを教えてください。
寛司 学生時代に産学協同プロジェクトに関わっていた時、私の発表がメディアに記事として掲載され、すごく感動しました。そこからメディア関連の会社に就職したいという気持ちが強くなり、新卒でネットメディアの企業に就職しました。そこでは広告営業に携わり、「いいコンテンツをつくることができれば人は見てくれる」「誰かに何かを伝えていく」という思いで6年間ずっと仕事をしてきました。
しかし、入社から6年経ち、メディアと接点を持ちながらも、コンテンツを作れるスキルを身に付けたいという思いから「次のキャリアは広報がいい」と考えました。そういうときに、ビズリーチが広報担当を募集していることを知人経由で知りました。創業時から多くのメディアで取り上げられていたことは知っていたので、ビズリーチならコンテンツをつくりながら広報も学べるのではと思い、13年1月に入社しました。
–具体的にどのようなお仕事をされているのですか?
寛司 広報の仕事というのは、既にある商品やサービスの広報をするのが一般的かと思いますが、「どのようにビズリーチのサービスを見せると皆さんに興味を持ってもらえるか?」という点を重視した広報活動をしています。ですから、企画を立ててメディアに提案することが多いです。
企画は、弊社の世界観を表現しながら、今注目されているトピックを取り入れています。過去に社長公募がメディアを賑わせていた時には、社長を公募する企画を開催しました。
他部署の案件にもどんどん関わる
–ビズリーチの広報としての仕事の醍醐味について教えてください。
寛司 新しいことに積極的にチャレンジできるというのは、すごい魅力ですね。それから、サービスを開発する際に、こういう機能を追加したほうがいいのではと提案することもあります。「開発のことを知らないのに、なぜ広報が口を挟むの?」というようなことを言う人は弊社にはいません。先日ローンチしたcodebreak;でも、チームで考えていくなかで最初はなかった機能が追加されたこともありました。
–これまでの広報の経験の中で印象に残っていることはなんですか?
寛司 一番印象に残っているのは、やはりcodebreak;のローンチです。ローンチする直前にいろいろと方向性が変わりました。よりよいサービスを追求するためには仕方のないことですが、サイトの方向性が変わるたびに広報プランも変えなければいけませんでした。それでも「間に合わない」「ダメだ」とあきらめず、ぎりぎりのタイミングまで「どうすればベストか」を考えました。自分一人であればくじけていたかもしれませんが、一丸となってあきらめずに頑張り、結果的に計画通りにローンチすることができました。最近のローンチだったこともあって、印象に強く残っています。
–広報として必要なノウハウやスキルはなんだと思いますか?
寛司 私自身、学んでいる最中ですが、特にベンチャーでは、チャレンジする勇気を持つことが重要だと思います。他社と同じことをやっていてもなかなかメディアの方は注目してくれません。そうすると、その先にいるユーザーにも私たちの情報が届かず、認知度がなかなか上がりません。広報として企業情報を正しく伝えることはもちろん重要なのですが、まずメディアの方々におもしろいと思ってもらえるように、「情報をどのように見せるか」という仕掛けも重要だと思っています。
ピザパーティーに社内運動会?
–社員のモチベーションを高め、組織内のコミュニケーションを活発化するための、貴社独特の取り組みになどがあれば教えていただけますか?
寛司 たくさんありますが、まず、月1回ピザパーティーを開催しています。このパーティーはオープンで、社員だけでなく、社員の知人も招待しています。前回は100人くらい社外の方が参加しました。
ピザパーティーは社員同士のコミュニケーションの活性化のためにやっていますが、実は、社員の知り合いで弊社に興味のある方々を招き、社風を知ってもらうためのパーティーでもあります。社員のうち8割が知人紹介などによる入社でして、私も入社前に参加し、いろいろな社員と話ができ、社風を知る上でとても参考になりました。そのため、入社前に外から見ていた会社のイメージが、入社後に違っていたというようなミスマッチは起こりにくいです。
このほかにも、先日は夢の島にある競技場を借り切って、グループ会社と合同で運動会を行いました。運動会という催し物自体、「今の時代、小学生でもあるまいし、いい大人が……」という感じですよね。でも、会社のモットーとして 「Work Hard, Play Super Hard=仕事も遊びも本気でやろう」を掲げていて、遊びでもみんな真剣そのもの。みんな本気になって玉入れや騎馬戦などに参加して、「毎年やりたい」と盛り上がりました。
それから、「全員が創業メンバー」を掲げていまして、役職などに関係なく全員がフラットでありたいという想いから、社内ではみんなニックネームで呼び合います。それもあって、仕事上の話をする時にはあまり社歴や実年齢を意識することはありませんね。ちなみに私は「ヒロちゃん」と呼ばれています。とてもユニークな会社です。
(構成=編集部)