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10年には社長公募という奇策に打って出た。元外務省キャリア官僚の八重樫永規氏を選出、社長代行に据えた。だが、「商売には向いていない」として、あっさりクビにした。14年にも2度目の社長公募に乗り出したが、「いい人材がいない」と書類選考の段階で打ち切った。「2回目の公募は社長に執着していないことを見せるためのパフォーマンス。辞める気はさらさらない」と社内外から見透かされる始末だった。
後継者問題と並んで話題となったのが田邊氏の高額報酬。ユーシンの2014年11月期の最終損益は4億3300万円の赤字。にもかかわらず同期の田邊氏の役員報酬は14億500万円。13年11月期(8億3400万円)の1.7倍となった。
会社は赤字、田邊氏は高額役員報酬。株主から「会社の私物化」と批判を浴びた。個人投資家の山口三尊氏は16年夏、田邊会長兼社長ら取締役や元取締役など7人を相手取り、5億7000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。
田邊氏にトドメを刺したのは業績の悪化だった。2016年11月期の最終連結損益は96億円の赤字(その前の期は2億円の黒字)に再び転落。業績予想の下方修正は3度目にわたり、年間配当は97年の東証1部上場以来、初めてゼロとなった。
業績悪化の原因は、13年にフランス自動車部品大手Valeo(ヴァレオ)社から鍵(キー)やドアハンドル部門を約200億円で買収したこと。「小が大を呑み込む買収」と話題になった。だが、業績には寄与せず失敗に終わった。
株主総会で経営責任を追及されることは必至の情勢だった。そこで総会を前に「一身上の都合」で退任した。次女の田邊世都子氏をトップに据え、院政を敷くというのがもっぱらの見方だったが、次女も同時に退任した。
新経営陣は約40年君臨した帝王の影におびえず改革を推し進めることができるかが大きな課題となった。その経営陣が出した答えが、ユーシンをミネベアミツミに“身売り”して、創業家と訣別することだった。
(文=編集部)
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