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小笠原泰「日本は大丈夫か」

日産、ルノーが中国企業に全株売却で「中国企業化」シナリオも

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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 また、もし日産がアライアンス解消を持ち出せば、ルノー株を25%まで買い増しして日産におけるルノーの議決権を失効させて、ルノーの傘下から抜けるという選択肢が使えなくなる。なぜなら、改訂アライアンス基本合意書(RAMA)に日産がルノーの株を買い増す条件として「日産の経営判断にルノーによる不当な干渉を受けた場合」と明記されており、日産の側からルノーの介入を招く行為をすれば、ルノー株買い増しの権利を自ら放棄することになる。そもそも、ルノー以外の株主からの反発も予想され、日産経営陣が単独でアライアンス解消に動くことは困難であろう。

 以上より、アライアンスの解消はできないであろう。

ルノー主導の交渉

 それを前提に今後の展開を考えると、ルノー主導の交渉にならざるを得ないであろう。まず、前述のとおり、ルノーのほうから先に日産に介入をしなければ、日産がルノー株を25%まで買い増しして日産におけるルノーの議決権を失効させることはできない。もし日産がルノーに対して一方的な株買い増しをすれば、ルノーが日産にTOB(株式公開買い付け)をしかけてきて、日産株式の過半数を所有する可能性がある。

 ルノーサイドが、ゴーン氏の後任を近々選定するという報道があるが、これはゴーン氏の拘留長期化が決定的となり、実務に復帰できる見込みが立たないので当然の決定である。フランスは日本のように推定有罪ではないので、推定無罪に基づき日産のようにすぐには解任しない。実務的な観点で後任を選定するのは、日産や日本の法制度を慮るわけではない。この後任決定は日産に有利なわけではなく、むしろ真剣に厳しい交渉に臨む態勢を組んでくると理解すべきであろう。

 そもそも、ルノー株を25%まで買い増すとルノーは確かに議決権を失うが、その代償として、10%分の株購入費用(時価総額ベースの2100億円にかなりのプレミアムを付けての購入が想定)を払って、議決権が行使できないルノー株を所有することになる。それに他の株主が賛同するとは考えにくい。また、ルノーと日産が相互に議決権のない大量の株式を保有することを、市場は歓迎するだろうか。

 次に、穏便な方法を考えてみよう。フランスの会社法では、ルノーの日産株式の保有が40%未満になると、日産の保有するルノー株15%に議決権が発生するので、日産がルノー保有の日産株43.4%のうち3.5%を買い取ることも考えられる。それにより、両社は相互に議決権を行使できることになるが、ルノーとフランス政府が合意する可能性は低いだろう。もし合意しても、現在約3割の議決権を有するフランス政府は対抗して、ルノー株を買い増して3分の1の議決権を確保するであろう。

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