トヨタは増資を引き受けるか
2つ目は増資問題だ。株主資本が49億円のマイナスになったため、増資によって埋め合わせる必要がある。1月30日付日経新聞は、トヨタの増資の動向を探っている。
「同社はトヨタ自動車の増資の引き受けを含めた支援を打診している。一方、トヨタは『ADRの利用については聞いているが、増資要請にはついては受けていない。現段階で仮定の件についてコメントできない』(渉外広報部)としている」
トヨタは持株比率11.62%の筆頭株主。2位はいすゞ自動車の9.08%。4位はトヨタグループのアイシン精機の2.35%(18年9月中間期時点)。資本構成上では、曙ブレーキはトヨタ系列といえる。
曙ブレーキの信元久隆会長兼社長は、日本自動車部品工業会会長やトヨタの取引先部品メーカーの協力組織である「協豊会」の会長を2度務めるなど、トヨタとの関係は深い。
しかし、取引先は日産自動車、本田技研工業(ホンダ)、米ゼネラル・モーターズ(GM)など多岐にわたっており、必ずしもトヨタの系列とはいえない。トヨタが増資を引き受けて、トヨタ主導で救済が行われれば、曙ブレーキはトヨタの系列に組み込まれることになるだろう。
曙ブレーキの顧客別売上比率(18年3月期実績)は、GMが28%で1位、日産が15%で2位、トヨタは11%で3位。以下、ホンダ(6%)、米フォード(6%)、三菱自動車(4%)、いすゞ(4%)など、“全方位外交”だ。曙ブレーキにとって系列色が強まることは得策とはいえない。
現在の筆頭株主はトヨタだが、かつては日産や三菱自など日本の完成車メーカーに加え、独部品大手のボッシュが大株主に名を連ねていた。ボッシュは1988年に曙ブレーキの株を取得し第2位の株主だったが、17年12月に全株を売却した。
一方、トヨタはどうか。ガソリン車を中心とした時代には、完成車メーカーは多数の部品メーカーを傘下に持つ“系列取引”にメリットがあった。だが、IT化が進むこれからの時代には、系列取引のメリットは薄くなる。そのため、系列色が薄まる流れにある。トヨタが曙ブレーキを系列に取り込めば、その流れに逆行する。トヨタが増資を引き受けるかどうかは、大きな焦点となる。