最大の顧客、米GMからの新規受注を逃した
曙ブレーキはブレーキシステムの開発のために、モータースポーツに挑戦している。2007年から世界最高峰の自動車レースであるFormula1(F1)に、マクラーレンチームのオフィシャルサプライヤーとしてブレーキシステムを供給。14年からは契約を強化し、マクラーレンチームのテクノロジーパートナーとして、ブレーキシステムを開発・設計・供給している。モータースポーツファンには広く知られた会社だ。
3つ目の課題は、米国事業の立て直しだ。経営危機に陥った最大の原因は連結売上高の半分を占める米国事業の失敗にあるからだ。
「同社は1980年代にGMとの合弁で北米に進出。2009年には独ボッシュの北米ブレーキ事業を譲り受けた。ボッシュの事業は赤字だったが、GMなどの顧客を抱えていることから買収した。
だがリーマン・ショック後の市場縮小時、ボッシュの工場は最新の設備をうまく制御できず、不良率を抑えるのに苦戦した。その後、受注が急増すると3交代制で工場をフル稼働させたり、部品を陸路ではなく空輸したりと場当たり的な対応が収益を圧迫した。
売上高の3割を占める最大顧客のGMの納期の要望を受け入れざるを得なかったわけだが、今回はそのGMから多目的スポーツ車(SUV)やピックアップトラックの次期モデルの受注を獲得できなかったことが追い打ちをかけた」(1月31日付日経産業新聞)
2月12日の決算発表会見で荻野好正最高財務責任者(CFO)は「米国事業の撤退は考えていないが、4つの工場で人員調整する」と述べている。
米国事業の混乱を収束できるのか。それは曙ブレーキが再生できるかの大きなポイントだ。
4つ目は経営体制の刷新だ。信元氏は1990年の社長就任以来、30年近くにわたってトップを務めている。外資系投資ファンドは、「“信元天皇”の体制が続く限り、経営再建は難しい」とみているという。経営体制の一新が不可欠なのだが、これが一番難しい。ワンマン経営者の“賞味期限切れ”という大きな壁が立ちはだかっている。
(文=編集部)