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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

セブン「24時間営業強要」問題で露呈、加盟店にコスト負担押し付け巨額利益得るコンビニ業界

文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer

 また、「企業イメージの向上」もある。多くの業界がそうであるように、コンビニ業界にも複数のコンペティタ(競合者)が存在し、熾烈な競争が繰り広げられている。こうした状況において、コンペティタが全店で24時間営業を実施している場合、自社のチェーンのみ実施しないという選択は、たとえ一部の店舗のみであっても、確かに難しいであろう。

 また、近年、「コンビニの社会インフラとしての役割」も注目されている。たとえば、日本フランチャイズチェーン協会は、「社会インフラとしてのコンビニエンスストア宣言」を発表し、環境、安全・安心、地域経済活性化、消費者の利便性向上といった課題に取り組むとしている。24時間体制で、安全・安心や消費者の利便性向上といった社会インフラの役割を担ってくれることは、もちろん多くの消費者にとって有益であり、コンビニへのイメージを向上させるであろうが、先に述べたとおり、そのためのコストはすべて加盟店が負担しなければならない事態となっている。

あるべき本部と加盟店の関係

 本来、本部と加盟店はともにWin-Winの関係を目指すべきパートナーであるはずだ。しかしながら、今回の24時間営業問題をはじめ、コンビニ本部と加盟店における多くの問題の根源には、お互いのベクトルが揃わない、さらに言えば真逆になってしまうといった現象があるように思われる。こうした根源的な問題が是正されない限り、今後も本部と加盟店との衝突は続いていくことだろう。

 たとえば、粗利ベースのロイヤリティ算出の仕組みでは、売上のみを重視する本部と、売上とコストを勘案して自店の利益を最大化させたい加盟店との間に、深刻な問題を生じさせてしまう。

 この点に関して、コンビニ本部が大きな利益を得ている現状を鑑みれば、本部が加盟店における人件費や光熱費に対して配慮しなければならない仕組みがあってもよいように思われる。たとえば、粗利益ではなく、人件費や光熱費を差し引いた営業利益などをベースにロイヤリティが算出されることになれば、加盟店の採算を度外視した24時間営業は本部および加盟店の双方の合意のうえで、なくなっていくのではないだろうか。
(文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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