ソクドクになるのは法律事務所に就職できなかった人だけではない。法律事務所の過酷な労働環境に耐えかねて退職、結果的に独立・開業するしかないケースもあるようだ。
「たとえば、朝7時から夜23時まで書面づくりに追われて心身のバランスを崩した新人弁護士や、徹底したマニュアル化によってひたすら弁護士の職印を押すだけという業務内容に絶望してソクドクになった人など、事情はさまざまでした」(同)
いずれにせよ、司法修習終了後、法律事務所に就職、イソ弁として経験を積んで活躍……という弁護士の定番ルートをたどれない人が増えてきているのだ。
深刻な新旧格差…“金バッジ”と“豚バッジ”
さらに、弁護士間の格差は新人とベテランの間に生じる「司法制度格差」抜きには語れない。この格差を生んだのもまた、99年の司法制度改革だ。
「改革によって弁護士界に旧司法試験(旧司)組と新司法試験(新司)組という2つのバッジが生まれてしまった。ある警察官などは、留置場に接見に来た弁護士が旧司だと下手な対応ができない“金バッジ”、新司は怖くないから“豚バッジ”と区分けしていると聞きます」(同)
一昔前は“新司”というだけで旧司組の弁護士にバカにされたり、顧客から敬遠されたりすることもあったという。いわゆる“新司組”が弁護士界で軽視されてしまうのは、なぜなのか。
「かつての旧司法試験は、合格率がおおむね3%といわれた難関でした。一方、制度改革後の新司法試験は、ここ数年の合格率がおおむね23%台。この合格率の開きから“新司”は実力が劣るとみなされ、現場で辛酸をなめることが少なくなかったと聞きます」(同)
弁護士になれば社会的地位と高い収入を得られ、華々しい生活が待っているかと思いきや、その現実は想像以上に厳しいようだ。それにもかかわらず、弁護士になるまでの労力やコストは高止まりしている。
弁護士になるには、平均しておよそ500万~600万円ほど必要だといわれている。法科大学院に入学すれば学費が年間で120万円前後かかり、2年次、3年次となれば、それがかけ算式で増え、合計で平均200万~300万円ほどが必要だ。司法試験予備試験や司法試験自体にも受験手数料がかかる上に、予備試験対策の予備校に通う場合も、また費用がかかる。
『弁護士の格差』 弁護士の価値が軽くなったという。かつてこそ“プラチナ”資格といわれたものの、今では、“シルバー”、なかには“銅”とまでいう向きもある。スキル格差、費用格差、経済格差に意識格差、これらのさまざまな格差はいかにして生まれたのか? 政治と同じく、日常生活に密接に繋がっている司法に対し、今こそ真正面から向き合うべき時だ――。