11月28日、2018年度の国家公務員の給与とボーナス(期末、勤勉手当)を民間企業と同程度に引き上げることを盛り込んだ改正給与法が参議院本会議で与野党の賛成多数で可決され、成立した。
8月の人事院勧告に従うかたちで、月給は平均655円(0.16%)増、ボーナスが0.05カ月増の年間4.45カ月分にそれぞれ引き上げられる。増額分は4月にさかのぼって支給され、平均年収は3万1000円増の678万3000円になるという。月給、ボーナスともに引き上げは5年連続だ。
今国会では出入国管理法改正案や水道法改正案に注目が集まっているが、一方で国家公務員の給与アップが決定したことに対して、「これで消費税を上げるの? まずは歳出を削る努力をすべきでは」「民間に合わせるというなら、大企業ではなく中小企業も入れて考えるべき」「こういうことはすんなり決まる。与野党仲良く可決ですか」「借金大国なのに、公務員の給料上げて五輪やって万博やって……財政どうなっちゃうの?」という声があがっている。
財務省の発表によると、国債や借入金などを合わせた「国の借金」は18年3月末時点で1087兆8130億円で過去最高を更新している。国民ひとり当たりに換算すると、約859万円の借金を抱えている計算だ。財政赤字は来年10月に控える消費税率10%への引き上げの大義名分でもあるが、そんななかで国家公務員の給料が上がることに納得できない人が多いようだ。
また、人事院は国家公務員の給与水準について「民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っています」としているが、ここでいう「民間」とは「企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上の事業所」のことで中小零細企業は含まれていない。
では、民間企業の給与を見てみよう。東京商工リサーチの調査によると、17年決算の上場2681社の平均年間給与は599万1000円(中央値586万3000円)で、前年の595万3000円から3万8000円(0.6%)増えており、11年の調査開始以来6年連続で前年を上回ったという。ただし、これは大企業の話だ。
背景には、安倍晋三政権がデフレ脱却のために企業への賃上げ要請を繰り返しており、日本経済団体連合会(経団連)加盟企業がそれに応じているという構図がある。さらに、大企業の賃金アップに追従するように国家公務員の給与も上がっているわけだ。
一方、国税庁の「民間給与実態統計調査」を見てみると、17年の平均給与は432万円(前年比2.5%増)で、男女別では男性532万円(2.0%増)、女性287万円(2.6%増)となっている。正規・非正規について見ると、正規494万円(1.4%増)、非正規175万円(1.7%増)だ。これは、従業員1人以上の事業所とすべての給与所得者が対象となっているため、より実態に近い数字とされている。国民感情としては、「民間に準拠するというなら、こちらに合わせろ」というわけだ。
同調査の平均給与と国家公務員の平均年収との間には246万3000円もの差が生じており、「女性ひとり分に近い」「非正規を雇ってお釣りがくる額」と波紋を呼んでいる。
これらの数字を見る限り、まずは社会問題化する非正規の100万円台という低収入をどうにかすべきだと思うのだが……。
(文=編集部)