消費者が企業活動に抱く疑問を考察するサイト ビジネスジャーナル ⁄ Business Journal
その姿勢自体は否定されるものではありませんが、優先交渉権を得ているわけでもない状態で、わざわざ相手に宣言することのメリットがどれだけあるのだろうかと、Aさんは思ったそうです。そして、より積極的な買い手候補者がいれば、その人と話を始めるようにしていました。忘れた頃に連絡をしてきた人に、ほかの人との交渉が進んでいることを伝えると、「自分を差し置いてほかの人と交渉するのはいかがなものか」といったことも、よく言われたそうです。
評論する側から、評論される側に回れない
M&A取引の経験がある会社員は、かなり少ないと推測できるので、いくら優秀な会社員といえども、初挑戦で一人で全体を見ながら進めようとすると、どこかピントが外れた対応をしてしまいます。そのため、Aさんは想定しなかったやり取りをせざるを得なかったそうです。
Aさんが送ったデータを勝手に読み間違え、勝手に分析・論評して、「あなたのデータには嘘がある」と断じてしまう人。立派な上場企業の管理系部門に所属しており、さまざまな分析ができてしまうことがかえってハードルを高くしてしまいました。
ほぼすべての情報を最初に渡しているのにもかかわらず、「リスク要因を確認したい」「デューデリジェンスを行いますので、詳細資料をその際にはいただきます」など、恐らくは勉強したばかりの言葉を使いたがる人。「具体的に、どんな情報を追加で必要なのでしょうか?」と聞き返すと、曖昧な返事に終始してしまい、結局は具体的な条件を出さずに終わるケースもありました。「さらに詳細を知りたい場合は、LOI(意向表明書)を提出後に面談した際にお尋ねください」としていても、しつこく渡したデータの具体的(されど些末な)質問を延々とする人もいたそうです。
ビジネスを完結させることは、なかなか想像できない
たまに交渉が進みそうになったとしても、意向表明書を出す段階では共通のハードルが見えたようでした。不動産取引における買付証明書と似たようなところもあり、法的拘束力はなく、本気度を測る儀式のようなものだと説明しても、きちんとした会社員ほど警戒して勘ぐってきてしまい、徹底して出してこなかったりする人も多くいたそうです。やはり会社組織の一員として動くことが当たり前の環境に長くいると、いきなり自分がオーナーとなってビジネスを一通り完結させる判断力や意志とスピード感を持つのは難しいようです。
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