USJがさらなる成長を目指すためには、入場者数を増やすことや、客一人当たりの単価引き上げが重要だ。その結果としてUSJの売り上げが増加し、収益性がさらに改善すれば、より積極的に設備投資を行い、テーマパークの魅力を高められる。USJはこの目的を達成するために、ダイナミック・プライシングに着目した。
テーマパークに行く際の動機は十人十色だ。また、企業が設定した入場料金が、すべての入場者にとって納得のいくものとも限らない。チケット代が安いと思う人もいれば、高いと思う人もいる。USJが人それぞれに異なる入場の動機に配慮するために、ダイナミック・プライシングは有効な策といえる。ポイントは、価格が変動する=一定ではないということだ。価格が変動することにより、消費者は自分自身に合った行動をとりやすくなる。その効果は大きい。1月、USJが変動価格制を導入し事実上の値上げに踏み切った後、入場者数は大きく減っていないようだ。
USJが変動価格制度に着目した理由
ダイナミック・プライシングは、経済学の基礎である需要と供給の関係を体現した価格設定の発想だ。需要が増えれば、価格は上昇する。一方、需要が減少し供給超過の状態が発生すれば、価格は下落する。この考え方を踏まえると、USJは需給メカニズムに基づいて、より最適な経営資源の配分を行うために、ダイナミック・プライシングを導入したと考えられる。
USJの場合、春休み期間中の1日券の価格は、12歳以上で税込8,700円だ。4月後半の平日の1日券の値段を見ると、12歳以上のチケット価格は税込7,400円に低下する。
この意義を、需要者と供給者の立場から考察すると、次のようになるだろう。
消費者は、ダイナミック・プライシングのもと需要動向に応じて価格が変化することにより、自分自身の価値観に合わせてチケットを手に入れることができる。テーマパークに行ってみたいとは思うものの出費も抑えたいという人は多い。そうした人にとって、平日の入場者が少ない際に、より安い価格でチケットを買えるメリットは大きい。それは人々の満足感を高めるだろう。
一方、どうしてもUSJに行きたい人は、多少の値上げには抵抗を感じないだろう。所得水準が高い人にとってみれば、「海外のテーマパークを考えればまだ安い」と映ることもあるだろう。