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苦境の造船業界、再編最終章〜「14年問題」を乗り越え“造船ニッポン”復活なるか

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苦境の造船業界、再編最終章〜「14年問題」を乗り越え“造船ニッポン”復活なるかの画像1「Thinkstock」より
 国土交通省が銀行、日本造船工業会と一体となって進めてきた造船再編は、川崎重工業(村山滋社長)と三井造船(田中孝雄社長)の経営統合交渉が破談したため、いったんは頓挫した。しかし、来年2014年には新たに造る船がほぼなくなる「2014年問題」という歴史的な危機に直面する。

 世界を席巻した日本の造船業界は、08年秋のリーマン・ショックを機に受注が激減。世界的な市場縮小に加え、中国と韓国の造船所が安値を武器に攻勢をかけ、注文を次々と奪い取っていった。ここ数年の超円高の逆風下、日本勢は新たな受注がまったく取れなくなってしまった。造船業界そのものが存亡の危機に立たされているのだ。

 新たな再編の核になるのはIHIだ。IHIは今年1月、造船部門の傘下企業をJFE系企業と統合して、ジャパン マリンユナイテッド(JMU)を発足させた。JMUは三井造船が造船部門(売上の60%弱)を分社化すれば受け入れる構えを見せている。

 IHIは、6月に日揮やJMUとともに、ブラジル最大級の造船所に25%出資する方針を決めた。海底油田の開発が活発なブラジルで、タンカーや資源掘削に使う船を生産する計画だ。三井造船の子会社、三井海洋開発(三井造船が50.1%出資)は、IHIグループよりブラジルでの海洋資源開発で先行している。IHIグループと三井海洋開発が組めば、大型プロジェクトの受注に弾みがつくとみられている。

 つまり、三井造船は造船・船舶部門を分社化してJMUに合流させる。三井造船の子会社、三井海洋開発はIHIと新たな海洋開発会社をつくるという案が有力なのだ。

 三井造船との提携交渉を白紙に戻したため、悪者になってしまった川崎重工業は、時計の針を10年ちょっと前に戻せばいいのだ。IHIと川崎重工は01年に造船事業の統合で合意したが、川重側が「対等合併」にこだわり、結局破談になった。

 米国のシェールガス革命でLNG(液化天然ガス)を積む専用船の需要が急増する。IHIも川崎重工もLNG運搬船の建造では実績がある。両社が得意とするLNG運搬船のタンクの部分の形状が異なるという利点があり、うまくいけば相乗効果が期待できる。

 今年6月に日本造船工業会の会長に就任した佃和夫氏は三菱重工業の経営トップだった。三菱重工は非上場の今治造船(12年国内建造実績1位)と共同出資で、LNG運搬船を設計・販売するMILNGカンパニーを設立した。

 日本の造船の近未来図はIHIを核とした連合体と、三菱重工・今治造船の2グループに集約されそうだ。中国、韓国にコスト面で対抗できる“造船ニッポン”の復活は平坦ではないが、円安の時にやらなければ何も進まない。

●中堅造船4社の動向

 常石造船(非上場/12年国内建造実績2位)と大島造船所(非上場/同4位)、新来島どっく(非上場/同7位)、サノヤスホールディングス傘下のサノヤス造船(上場/同11位)の4社が7月4日、船舶の設計・技術部門を統合して新会社マリタイムイノベーションジャパンを設立した。資本金は1000万円で、社長には日本郵船子会社出身の信原真一氏が就任した。新会社には日本郵船、日本海事協会も出資し、4社から数十人が移籍し、将来的には60人体制にする見通しだという。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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