米イェール大学経営大学院の研究チームは12日(現地時間)、集計情報『Over 600 Companies Have Withdrawn from Russia—But Some Remain』を発表した。ロシア軍のウクライナ侵攻以来、同国での営業活動を取り止めたり、撤退したりした企業が600社に上ったことを明らかにした。この集計には含まれていないが同日(同)には、欧州通信大手のノキア(フィンランド)がロシアからの事業撤退を表明した。ロシア軍によるウクライナ民間人への残虐行為が次々に発覚し、ロシア国内で経済活動を行う企業・団体に対する国際世論の圧力は高まり続けている。
イェール経営大学院「制裁の範囲を超えた自主的な撤退を要求」
集計を担当している同研究チームは、ロシア軍のウクライナ侵攻以来、全世界の主要企業1000社の動向をチェック。今月12日までに「600を超える企業が、国際的な制裁で要求される範囲を超え、ロシアでの事業を自主的に削減すると発表した」と述べている。また「一部の企業は、ロシアでの事業を継続している」とも指摘する。同サイトには、みずほフィナンシャルグループやNTTなどの日本企業を含む約1000社がリストアップされており、各企業の公式発表を踏まえて、「事業継続」「撤退」などの方針を記載している。
当初、企業リストの状態を示すカテゴリは「withdraw(撤退)」と「remain(継続)」の2種類のみで、数十社がロシアでの経済活動の方針を発表したにすぎなかったが、現在は1000社の動向について「ロシアのパートナーと継続」「制裁範囲内での運用」といったように、細かな情報が記載されている。
研究チームは「我々は制裁によって法的に要求される限度を超え、ロシアでの事業を自主的に削減するよう企業に要求する」と主張している。
ロシア人に外部の視点を提供するインフラの重要性
一方、ノキアは12日、プレスリリース『Nokia to exit the Russian market, no impact to financial outlook』を発表。ロシアからの事業撤収を発表した。プレスリリースによると、「ウクライナ侵攻の初期からノキアにとって、ロシアでの私たちの存在を継続することは不可能であることは明らか」とし、過去数週間にわたって配送や新規事業を停止するなどの移行措置を行ってきたという。研究開発活動のロシアからの移転も実施し、「これで、ロシア市場から撤退することを発表できるようになった」と述べた。また、ロシアの労働者に対し「私たちの優先事項は引き続き従業員の安全と幸福です」と配慮を見せた。一方で、通信事業者が撤退することで、ロシア国内の厳しい言論統制により、同国民が外部の情報にアクセスできなくなる状況が一層加速することを懸念し、以下のような見解を示している。
「人道上の理由から、西側諸国の政府は、ロシアの重要な通信ネットワークインフラストラクチャが機能しなくなるリスクについて懸念を表明しています。彼らはまた、ロシアの人々に外部の視点を提供するインターネット情報への継続的なアクセスを確保することの重要性を強調しました。
事業終了時にネットワークを維持するために必要なサポートを提供することを目指し、現在の制裁に準拠してこのサポートを有効にするために関連するライセンスを申請します。
これは、ロシア市場から撤退する際にノキアが取るべき最も責任のある行動方針です」
財務的影響に関しては、ロシアでの売上高は同社の2%未満であり、他の地域での需要を考慮すると、「2022年の見通しを達成する能力に影響はない」とした。
各国による制裁と各事業者による自主的な撤収、ロシア政府による情報統制で、同国の社会的、経済的孤立は深まり続けている。
(文=Business Journal編集部)