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『いつも一言多いあのアナウンサーのちょっとめったに聞けない話』著者・長谷川豊氏インタビュー

過酷な局アナの実態〜人気アナ出演一極集中の弊害、自腹高額出費、守ってくれない会社…

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長谷川 今、アナウンス室には75人くらいのアナウンサーがいると思います。その中で、皆さんが名前と顔の一致するアナウンサーは、わずか数人だと思います。それ以外は、アナウンス室に来て、雑誌を読んで、時間になったら帰ります。すごくバランスが悪いですよ。仕事が一人に集中すると、ほかが育ちませんからね。

–10年に退社した高島彩をはじめ、ここ最近フジテレビの人気女子アナの退社が続いていますが、その背景にはやはりそうした同社の体質への不満があるのでしょうか?

長谷川 一概には言えないでしょうが、そもそも不満がなければ辞めないですよね。昨年の中野美奈子と平井理央、そして今年は高橋真麻に松尾翠、本田朋子と人気アナの退社が続きますが、加えてフリー転身の噂が絶えない加藤綾子や生野陽子がもし退社するようなことがあると、フジテレビは一気に崩れていく可能性すらあります。

–そういう状況を改善し、きちんとアナウンサーを育成し、局としてより有効に活用できるような環境をつくるためには、どうすればよいとお考えですか?

長谷川 私はフジテレビに関しては女子アナの採用は、もうやめたほうがいいと思っています。その代わり、時給契約の局専属タレントを採用すべきだと思います。募集すれば、応募者はかなりたくさんいると思います。こうすることによって、人件費を大幅に削減できます。しかも、アナウンサーではなく、タレントですから、さまざまな雑誌のグラビアにも使ってもらえるので、経営効率は良くなります。

 一方で男性アナウンサーは仕事が多くて、めちゃくちゃ忙しいですから、毎年1~2人は採用しないとダメですね。今、地上波だけでなく、BSやCSでもスポーツコンテンツが急増していますが、BSとCSは予算がないので、実況できる男性アナウンサーはほぼ休みなしでやっています。

–フジテレビはここ最近、視聴率の低下も叫ばれていますが、原因はなんだとお考えですか?

長谷川 視聴率で7年連続三冠を取っていましたが、昨年はテレビ朝日、日本テレビに次いで3位、今年はTBSの『半沢直樹』が好評なことから、さらに下がっているようです。7年連続三冠当時の制作スタッフが、ほぼ全員残っているにもかかわらずです。一部の決定権を持つ上層部が、自分の出世のことだけしか考えず、視聴者を見ないという姿勢が、視聴者に見抜かれてしまっているということだと思います。

●経費不正使用疑惑の真相

–そんなフジテレビを、長谷川さんは今年4月に自主退職されました。原因はニューヨーク駐在時の経費不正使用疑惑で、アナウンサー室から著作権部へ異動させられたことですが、この問題が世間を騒がせるほど大きくなってしまったのはなぜでしょうか?

長谷川 私の独自取材によると、フジテレビのある社員が「長谷川が滞在経費を横領した」と勝手な勘違いして、「長谷川を処分しなければいけない」と社内で上層部にまで報告してしまったことが発端のようです。それを受け、後日ニューヨークにいる私のところに人事の方が調査に来たので、私は「相当誤解されています」と、メールなどの証拠資料もすべてお見せし、事実関係をきちんと説明しました。しかし、すでにその段階で社内の関係者もそこまで大騒ぎをしてしまったため、今さら「勘違いでした」では済まされなくなっていたのではないかと思われます。

–相談された弁護士の方々も、「横領には当たらない」という判断のようですね。

長谷川 4組6人の弁護士に判断を仰ぎました。それから、今回『いつも一言多い〜』を刊行するに当たっては、小学館の弁護士や法務担当の方にも相談しました。まず横領に関しては、「不法領得の意思がまったくなく、お金を返そうとしているのが明確なことから、横領には当たらない」というのが皆さんの判断でした。それどころか、「フジテレビは典型的な労働契約法15条違反を犯している」とも言われました。

 労働契約法15条というのは、「懲戒するための客観的に合理的な理由がなく、社会通念上懲戒が妥当だと認められない場合、その懲戒は無効である」というものです。特に一方的な、公平性を欠く懲罰は無効であるという幾つもの裁判事例が存在するとのことです。私の場合は私の主張を無視され、提出しようとした書類の受け取りすら拒否されたので不公平な処分と言われてもしょうがないという事ですね。

–結局自主退職されたわけですが、どうして法的手段に訴えなかったのですか?

長谷川 帰国を命じられて日本に戻ってきた時には、法的手段に訴えようと考えていました。ただその相手は、フジテレビそのものではなくて、私を陥れた人たちと懲罰委員会というシステムに対してでした。私は、同局には本当にお世話になったと思っていますし、その同局に対して私のほうから仇をなす行為はしたくないという思いでした。でも、「一部の人間だけを訴える」あるいは「特定のシステムだけに異議を唱える」、そういうことはできないと弁護士に教えられました。

 ただ、どうしても自分の子ども、それから両親、自分の家族の名誉は守らなければいけないと思いました。それで、いろいろと考え抜いた挙げ句、最終的にアナウンサーとしてこれまで研鑽してきた “伝える力”を使って、フジテレビを退社した翌日の4月2日から、今回の顛末に関するブログを書き始めました。

–そういう思いがある中で、今回書籍を出された狙いはなんですか?

長谷川 ブログでは、実際に起きたことの2~3割くらいしか書くことができず、説明できていない部分も多かったのです。また、質問、励まし、また批判もたくさん頂きました。そういう中で、小学館の担当の方から、「私の次のステップになるような、そしてひとつのけじめになるような、そういう本を書いてみませんか」という温かいお言葉を頂いたわけです。そこで、今回の顛末について、ブログに書くことのできなかった法律的な解釈を含め、その一部始終を書き記すことにしたのです。

–最後に、今後のご活動予定などについて教えてください。

長谷川 今年10月からTOKYO MXの情報番組で、毎月第一水曜日にキャスターを務めることが正式に決定しました。フジテレビを退社してからこれまでの半年間は、とにかくテレビに戻ることだけを考え、声をかけていただくのをひたすら待っていましたので、やっと一歩目を踏み出せたという思いです。来年4月の番組改編時には、もう一段階飛躍できるように頑張っていきたいと思っています。

 それから、フリーになったことで、すごく講演の依頼をたくさん頂くようになりました。テレビで毎日のように見ていた人間が、テレビの裏側で起きていることを話すわけです。皆さん、かなり真剣に聞いてくれます。これからも、テレビ番組というものがどのように作られているのかについて、丁寧に話をしていきたいと思っています。

 今はとにかく、あらゆる仕事にこだわらずに、ナレーション、レポート、なんでもやりたいと思っています。そして、今回失ったものを取り戻すために、一歩ずつ、しっかりと歩みを進めていきたいと思っています。

–ありがとうございました。
(構成=編集部)

BusinessJournal編集部

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