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ジブリパーク、ベビーカー禁止が波紋…ディズニーランドやUSJでは様々な工夫

文=Business Journal編集部、協力=中島恵/明治大学兼任講師
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ジブリパークのHPより
ジブリパークのHPより

 昨年11月に開業した、スタジオジブリの世界を表現した「ジブリパーク」(愛知県)。ジブリ作品といえば多くの子どもに愛されているが、パーク内へのベビーカーと傘の持ち込みが禁止されていることをめぐって、議論が沸き上がっている。

 県営「愛・地球博記念公園」内につくられたジブリパークは「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」の3つのエリアで構成(残り2エリアは23~24年に開業予定)。たとえば「ジブリの大倉庫」には、「三鷹の森ジブリ美術館」だけで上映されているスタジオジブリ制作の短編アニメーションを上映する「映像展示室オリヲン座」や、ジブリ作品の登場人物になりきって名場面の中に入りこめる「ジブリのなりきり名場面展」、『となりのトトロ』の世界を表現した遊び場「ネコバスルーム」、『天空の城ラピュタ』に登場する廃墟となった庭園を再現した「天空の庭」など、さまざまな施設が用意。「どんどこ森」には『となりのトトロ』でサツキとメイが引っ越してきた家を再現した「サツキとメイの家」などもある。

 ジブリパークの大きな特徴といえるのが、大規模なテーマパークで人気を集めるアトラクションや乗り物がないという点。また、東京ディズニーリゾートやUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)では持ち込みが可能なベビーカーが持ち込み禁止という点も、他の有名テーマパークとの違いとして挙げられる。

 ジブリパークの敷地面積は約7.1ヘクタール(5エリアすべて開業後)であり、これは東京ディズニーランドの約7分の1の規模。十分に広い面積を有しているといえるが、子どもがいるファミリー層が主要なターゲット顧客と考えられるだけに、ベビーカーが持ち込めないことについてSNS上では以下のように賛成と疑問の声が続出している。

<子供向けのアミューズメントパークで禁止は流石に謎>(原文ママ、以下同)

<ベビーカーは禁止で子ども連れの方はずっと抱っこしてなきゃいけない拷問みたいな仕様放置>

<見るのに数時間を要する場所でベビーカー無しはちょっと 正直な感想は…失望>

<赤ちゃん連れてる人大変そうだな…>

<ジブリパークのマナーやルールづくりのすべてがこれにより面倒くさいことはしないに見える。世界観を守るために再現を優先してベビーカーが無理になったんじゃなくて、面倒くさいからベビーカーも無理になって見える>

<ジブリパーク行ってきたけど ベビーカーは外で預けるってのは、妥当かなと思うな… めちゃくちゃ混んでる 通路狭い 階段だらけ>

<なんでベビーカー持ち込めないってのに文句言うの?ホームページに書かれてるし、施設側が最初から提示してる利用条件じゃん>

<ジブリパーク(ジブリの大倉庫)にベビーカーなんて危なくて持ち込めないよ 狭くて人多くて確実に身動き取れなくなる>

ジブリパークのコンセプトが影響か

 前述のとおりジブリパークは愛・地球博記念公園のなかにあり、記念公園内はベビーカー使用が可能なため、ジブリパークの各エリア内に入る際には専用置き場にベビーカーを預けるかたちになる。ちなみに東京ディズニーリゾートとUSJはベビーカーの持ち込みが可能なのに加え、有料のレンタルサービスもあり、ベビーカーの専用置場も設置されている。ジブリパークはベビーカー使用禁止の理由について、メディア各社の取材に対し「事故を防ぐための措置」と説明しているが、アミューズメント業界関係者はいう。

「要はジブリパークは、そもそもの設計として施設内でのベビーカー使用を前提としていないということ。ジブリパークは『森や道をそのままに、自分の足で歩いて、風を感じながら、秘密を発見する場所』というコンセプトのとおり、森の間を通る狭い道や階段、坂が多い公園という表現が近く、歩けない年齢の子どもが来場することは想定されていないと考えられる。一方、東京ディズニーリゾートやUSJは園内のあらゆるところにベビーカーを使用する客への配慮がなされており、段差も少なくユニバーサルデザインが徹底されている。

 アミューズメントパークに限らず、大はショッピングモールから小はコンビニまでの小売り施設、宿泊施設、鉄道や航空機などの交通機関では、ベビーカーをめぐる問題というのは何かとトラブルになりやすく、企業側の悩みの種。それだけに企業側はさまざまなルールや設備を設けて神経を使っている。ジブリパークでは、最初からトラブルの種を摘む意味でもベビーカーを持ち込み禁止としたのかもしれないし、それはそれで運営会社の判断としてはありだと思うが、ファミリー層がメイン顧客の娯楽施設でベビーカーが使用できないという根本的な矛盾は、今後長期にわたり集客を維持していくうえで大きな支障になる可能性はあるかもしれない。

 そして、運営会社としての対外的な説明が不足している感は否めない。先月にはエリア内に設置されたキャラクター像の胸を客が触る写真がネット上で拡散されるという騒動が起きたが、そのときもメディア各社の取材にノーコメントを貫くなど、今回のベビーカー問題しかり、広報対応に粗さが目立つ。運営会社のジブリパークは中日新聞とスタジオジブリが母体となって設立されたということだが、新聞社とアニメ制作会社のノウハウだけではアミューズメントパークの運営は難しい。それなりのプロが入っているのかが気になる」 

ジブリ美術館もベビーカー禁止

 テーマパーク経営に詳しい明治大学経営学部兼任講師の中島恵氏はいう。

「ジブリパークは館内がそれほど広くなく、通路も狭いので、ベビーカーが増えるとスムーズな通行の妨げになるためではないでしょうか。館内はスタジオジブリが運営する『三鷹の森ジブリ美術館』と似ていると感じますが、ジブリ美術館もベビーカーは禁止で、開業から20年以上たちますがベビーカー禁止が問題視されたことはありません。

 また、ジブリパークの館内を見て回る時間は1~2時間ほどだと思われ、小さなお子さんがいても、徒歩や抱っこ紐などを組み合わせれば問題なく回れると判断されたのかもしれません」

 では、国内の他のテーマパークはどうなっているのか。

「東京ディズニーリゾートやUSJを見て回るのは1日がかりとなるため、小さな子どもがいる場合はベビーカーがなければ無理なので、来場者が園内でベビーカーを使用する前提で各所に工夫がなされています。園内には何カ所も専用置場があり、たとえば東京ディズニーリゾートで小さい子どもに人気のマーメイドラグーン(東京ディズニーシー内)やファンタジーランド(東京ディズニーランド内)の前の置場には、時間によってはおびただしい数のベビーカーが置かれています。また、アトラクションに乗るまでの待機場所であるQラインでも、ベビーカーを持ち込まないようになっています」

(文=Business Journal編集部、協力=中島恵/明治大学兼任講師)

中島恵/明治大学経営学部兼任講師

中島恵/明治大学経営学部兼任講師

修士(経営学)(明治大学)
2005年明治大学大学院経営学研究科博士前期課程修了、2009年同博士後期課程単位取得満期退学、星稜女子短期大学(現・金沢星稜大学短期大学部)経営実務科専任講師、大阪観光大学観光学部専任講師などを経て2021年より現職。著書に『東京ディズニーリゾートの経営戦略(2013年)』『なぜ日本だけディズニーランドとUSJが「大」成功したのか?(2017年)』『テーマパーク産業論 改訂版 日本編(2022年)』など、いずれも三恵社。
中島 恵公式ブログ

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