電車遅延の振替輸送、実施基準と各社間の精算は?対照的な小田急さんと東急さんに聞く
この連載企画『だから直接聞いてみた for ビジネス』では、知ってトクもしなければ、自慢もできない、だけど気になって眠れない、世にはびこる難問奇問(?)を、当事者である企業さんに直撃取材して解決します。今回は人気放送作家の山名宏和氏が、電車遅延による振替輸送の実施基準や鉄道各社間の精算方法に関する疑問について迫ります。
【今回ご回答いただいた企業】
小田急電鉄様、東急電鉄様
いつから電車は、こんなにちょくちょく遅れるようになったのか。時刻表通りに運行するのが、日本の鉄道の誇りだったのではないのか。
電車がよく遅れるようになった原因は、いくつかあると思う。
一つは相互乗り入れが増えたことだ。今や都内の私鉄各線では、いたるところで相互乗り入れが行われている。路線が長くなればなるほど、トラブルが起きる可能性は高まる。そして、どこかの路線が遅れると、その影響が乗り入れているすべての路線に及んでしまう。
もう一つは、やはり人身事故の多発だろう。しかし、ひと口に人身事故といっても、自殺もあるし、最近増えているスマートフォンやゲームの「ながら歩き」で転落した場合もあるだろうし、誰かに追突されて不可抗力で落ちてしまったケースもあるだろう。最後の一つは仕方ないが、前者二つは本当に迷惑な話である。そろそろ鉄道会社も人身事故の詳細を明らかにして、自殺も不注意による転落も迷惑行為であると、世に訴えたほうがよいのではないだろうか。
そんなもろもろの事情で電車が遅れる時に行われるのが、「振替輸送」である。この振替輸送のお知らせを知った時、いつも気になることがある。
「どういう基準で振替輸送になるんだ?」
電車が遅れていても、振替輸送になる時とならない時がある。この違いはなんなのだろうか?
ということで、小田急お客さまセンターさんに直接聞いてみた。
「振替輸送があるかないかって、どのように決まるんですか?」
担当者 基本的に、15分以上の遅れが見込まれる場合に、振替輸送を行います。
–事故でも、天候の影響でも、変わらず15分が基準なんですか?
担当者 はい。ただこれもですね、運輸指令所というところがありまして、そちらの判断になりますので。
–では、15分以上かかるようでも、運輸指令所から通達がなければ、振替輸送にはならないということでしょうか?
担当者 はい。ただ、15分以上の遅れが見込まれる場合ですと、原則として(振替輸送は)行うということになっております。各線の運行状況や、復旧めどなどに関する情報もすべて集まってきますので。それらを総合的に判断して通達を出すというわけです。
小田急の場合、「実際に10分程度しか運行が遅れていなくても、もろもろの影響で15分以上の遅れが見込まれると判断された場合、振替輸送を行うという判断になる」そうだ。
●東急には明確な基準はない?
なお、同じ質問を東急電鉄お客さまセンターにも聞いてみたところ、次のような回答だった。
担当者 長時間の遅延が見込まれる場合には、上の者の判断で、振替輸送を実施する、ということになっているようです。
–具体的な時間の長さは決まってないのでしょうか?
担当者 そうですね。場合によって状況は異なりますので、「何分で」という決め方はしていないです。
振替輸送については、もう一つ疑問がある。運賃の問題だ。振替輸送の場合、小田急の定期であっても、JRにタダで乗ることができる。これはどういう仕組みになっているのだろうか?
この疑問について小田急と東急の両社に聞いたところ、こちらも回答が異なっていた。
【小田急の回答】
「状況によっても変わってくるのですが、従来は振替乗車券というものをお配りして、その枚数で精算をやってきていたのですが、今では一人ひとりにお渡しするのが困難な状況ですので、たとえばJRと小田急の契約で、相互で折半する取り決めになっておりますので、特に精算をするということではないという状況です」
【東急の回答】
「基本的には、振替輸送時に振替乗車票というものを配らせていただいております。そちらを到着駅で回収させていただき、その枚数に応じて、後日請求などのやりとりをさせていただいている、というかたちでございます」
「振替輸送」に関しては、なんとなく小田急のほうが進んでいる気がする。しかし裏を返すと、小田急は乗客数や支線の多さから遅延が多いといわれるが、東急より小田急のほうが振替輸送を実施する機会が多いからなのかもしれない【編註:振替輸送発生回数は非公開のため詳細は不明】。
(文=山名宏和/放送作家)
<近況>
初風邪をひきました。今回は喉だけではなく舌も腫れているため、会議で発言するのもひと苦労です。舌からくる風邪用のベンザブロックを作ってほしいものです。