新型ロケット「H3」2号機の打ち上げ成功を受け、三菱重工業は宇宙事業の拡大に弾みをつけたい考えだ。衛星打ち上げ需要は世界的に急増しており、ロケットの打ち上げは成長が見込める有望分野。米欧のライバルの背中は遠く、売上高はまだ年500億円前後にすぎないが、コスト競争力を強化し市場への食い込みを狙う。
H3は、三菱重工が宇宙航空研究開発機構(JAXA)の下で開発を進める新型ロケット。現行の「H2A」と同様、開発完了後は技術移転を受け、三菱重工が製造や打ち上げサービスを担う。
開発ではコスト削減に重点を置き、打ち上げ費用をH2Aの半額の50億円程度に引き下げることを目指している。3Dプリンターによる一体成形で部品数を減らしたほか、割安な車載用電子部品を積極活用した。
コストを下げていくには打ち上げ回数の増加も必要となる。三菱重工は、民間受注の獲得で年6回以上は実施したい考えで、既に米衛星通信サービス大手から発注を受けている。徳永建・宇宙事業部技師長は「早期のサービス開始を望む声が来ているので、早く対応したい」と意気込む。
打ち上げ後の記者会見で、江口雅之執行役員は「円安も追い風に国際競争力のある製品にしたい。打ち上げを増やし、売り上げを2~3割は増やしたい」と述べた。
だが、行く手には、打ち上げサービスでしのぎを削る米欧勢が立ちはだかる。中でも実業家イーロン・マスク氏が率いる米スペースXの「ファルコン9」は、機体の一部再利用や複数の発射場の活用で低価格を実現し「既に独り勝ちの状態」(徳永氏)という。米ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)や欧州アリアンスペースも新型機の実用化を急いでおり、三菱重工の受注拡大は容易ではない。 (了)
(記事提供元=時事通信社)
(2024/02/17-16:35)