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大阪王将「ナメクジ」告発者逮捕が物議…事実でもSNS投稿は犯罪になるか

文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表
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大阪王将の店舗(「Wikipedia」より)

 2022年7月にSNS上で宮城・仙台市内の「大阪王将」に「ナメクジが大量にいる」旨の投稿を行った男が、威力業務妨害の疑いで逮捕された。これに対し、インターネット上では大阪王将や警察の動きを疑問視する声が相次いでいる。

 威力業務妨害の疑いで逮捕・送検されたのは、大阪王将・仙台中田店の元従業員男性。この男性は22年7月、店内の厨房でナメクジやゴキブリが大量に発生していると、写真付きでSNSに投稿。さらに、店長あてにLINEで「ナメクジ超大量発生しています」と報告し、「ザルにもいるから気をつけて」との返信があったスクリーンショットも投稿し、多くの注目を浴びた。

 ネット上で注目が高まったことを受け、大阪王将は保健所による調査が行われたことを明かし、「調査では、ナメクジ、そ族昆虫などは見受けられませんでした」と報告。その一方で、「湿気の多い季節に外部からの侵入があったことが店舗からも報告がございました」と、店舗から受けた連絡内容についても説明した。

 その約1カ月後、大阪王将は同店舗の運営会社とのフランチャイズ契約を解除し、同店舗に加え、この運営会社が運営していた仙台西多賀ベガロポリス店も閉店した。

 確かに、元従業員の男性がSNSに投稿したことで、店舗が不衛生であるような印象を世間に与え、結果的に閉店にまで至ったといえる。だが、告発内容が虚偽ではなかったのであれば、逮捕は行き過ぎのようにもみえる。男性は当初、店長にナメクジの発生を報告したが、適正な対処がされなかったことで、SNSに投稿したように見えるからだ。

 そのため、SNS上には「悪ふざけをしたバイトテロと違って事実を報告しただけでも威力業務妨害罪になるの?」「不正の内部告発をしたら逮捕されるのはおかしい」など、刑事告訴した大阪王将や、逮捕・起訴にまで踏み切った警察の判断に疑問を呈する声が続出している。

 ちなみに、店舗の運営会社は、雇用調整助成金など国の助成金を不正受給していたことが明らかになっており、大阪王将からの契約解除は、元従業員のSNS投稿だけが原因ではなかったのではないかとみられている。

 山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は、逮捕された経緯を次のように推測する。

「『業務妨害罪』には、暴力などを使うなどして業務を妨害する『威力業務妨害罪』と虚偽情報を拡散させるなどして業務を妨害する『偽計業務妨害罪』があるのですが、今回の逮捕は『威力業務妨害罪』でした。おそらく『ナメクジがいる』ことは事実だったので、虚偽情報による業務妨害ではないとされたのでしょう。

 とすると、『店にナメクジがいる』ことを伝える方法に問題があったのではないでしょうか(たとえば、ナメクジの写真などを、人が不愉快となるような画像や言葉をもってSNSで拡散することで店側に圧力をかけたこと)。

 なお、時系列で言えば、店の不衛生さを告発したら放置されたという点が端緒になったようですが、SNSに投稿する行為の時点で間違っているので、店側を非難するのは筋違いです」

 誰でもSNSに投稿することで社会に広く情報を拡散することができる時代になったが、時にはそれが人や店などの信用や名誉を傷つけることを理解した上で、慎重に投稿する内容を吟味する必要があるのだろう。

(文=Business Journal編集部、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

山岸純/山岸純法律事務所・弁護士

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。
山岸純法律事務所

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