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不正続出のトヨタ、会長の報酬16億円に増額…セブン&アイ役員は77億円

文=Business Journal編集部、協力=植村拓真/公認会計士
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トヨタ自動車の本社(「Wikipedia」より)

 グループ企業の相次ぐ不正に揺れるトヨタ自動車の会長、豊田章男氏の役員報酬(2024年3月期の有価証券報告書記載分)が前期比62.4%増の16億2200万円であることが議論を呼んでいる。一連の不正が起きた時期は豊田氏がトヨタ社長を務めていた時期と重なっており、不正発生の原因としてトヨタとの関係性も指摘されているなか、高額な報酬の妥当性を疑問視する声も聞かれる。

 トヨタのグループ企業の不正が続いている。22年、日野自動車はエンジンの排出ガスや燃費の試験で不正を行っていたと公表。23年、ダイハツは完成車の試験不正に伴い出荷停止を実施。同年、豊田自動織機はエンジン認証試験で不正を行っていたことを公表。そして今月にはトヨタ自動車の「型式指定」の認証不正が発覚した。とくに日野自動車とダイハツはトヨタの子会社であり、不正に走った背景には親会社であるトヨタからの強いプレッシャーもあったと指摘されている。豊田氏は09年から23年までトヨタ社長を務めており、不正の責任を問う声も多い。今月開かれた定時株主総会に際しては、米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービス(ISS)が「トヨタグループで相次ぐ不正の最終的な責任が(豊田氏に)ある」として、豊田氏の取締役選任議案に反対するよう株主に推奨するという動きも出ていた。

 豊田会長の報酬が大幅にアップした要因は、役員報酬制度の見直しだ。従来は固定報酬と業績に応じる変動報酬の比率が半々だったが、24年3月期より固定報酬が30%、単年の業績を反映したSTI(短期的報酬)が20%、中長期的なKPIや個人査定を反映したLTI(中長期的報酬)が50%となった。同期決算は、営業利益が前期比96%増の5兆3529億円で過去最高を更新しており、変動報酬が伸びた。

「この業績で16億円という報酬は決して高くはなく、海外の基準に照らせば低いともいえる。変動報酬部分のすべてが客観的に示される数値のみで決まるわけではないだろうが、報酬決定ルールが存在し、また将来の取締役の報酬算出の前例にもなるので、恣意的に高くも低くもできない。とはいうものの、日本経済全体にまで影響をおよぼす不正を相次いで起こしているなかで高額な報酬を得るというのは、世論的な納得を得られるのかという面もある。役員報酬は決められた金額を受け取り、不正への責任を取るという意味で数カ月分の報酬返上という手段を取る選択肢もあるだろう」(中堅IT企業役員)

セブン&アイHD

 もっとも、日本企業のなかで豊田氏より高額な報酬を受け取っている役員はいる。たとえば、セブン&アイ・ホールディングス(HD)取締役のジョセフ・マイケル・デピント氏は77億3200万円(24年2月期有報)、LINEヤフー代表取締役(6月に退任)だった慎ジュンホ氏は20億円(24年3月期有報)、ソニーグループの吉田憲一郎代表執行役会長は23.4億円(同)、ソフトバンクグループ取締役のレネ・ハース氏は34.6億円(同)となっている。

 突出しているのがセブン&アイHDのデピント氏だ。23年度、同社の代表取締役の井阪隆一氏の報酬は3億4100万円、他の3人の日本人取締役は1億円台。デピント氏はセブン&アイHDの連結子会社7-Eleven,Inc(米セブン-イレブン)のCEOを務めており、そこから受け取る分が大半を占めたため高額となった。米セブンが21年にM&Aによるスピードウェイ事業の取得を完了させたことで22年の業績が計画を上回ったことに伴い、米セブンから約74億円のインセンティブが支払われた。

 同社といえば、役員報酬の開示プロセスが疑問視される事態も起きていた。取締役5人の役員報酬の総額は約85億円だが、5月28日の同社の株主総会の招集通知には取締役6人の報酬総額として7億6300万円と記載。株主総会の開催後に有報を公表し、そのなかで約85億円という金額を開示。株主総会で高額な役員報酬への指摘が出ることを避ける意図があったのではないかとの指摘も出ていた。

 植村会計事務所代表で公認会計士の植村拓真氏は次のように解説する。

「法律上は問題ありません。会社法では、役員報酬総額は株主総会で決めると定められており、その金額は会社単体での数値です。ですので、セブン&アイHDの例でいえば、デピント氏が米国子会社から支払われた報酬は含まれないことになります。一方、有報には連結ベースでの報酬金額を記載するよう金融商品取引法で定められており、1億円以上の報酬を受け取る取締役については連結子会社などから受け取る分の報酬も含めて記載しなければなりません。セブン&アイHDはこれらのルールに則って情報開示を進めたものの、結果的に一部から疑問を持たれることになってしまったということではないでしょうか。

 あくまでもルールに則った対応であるため、同社がデピント氏の報酬総額を総会前に開示していなかった点についても、何らかの意図を持ってわざとそうした、とまではいえないと考えます。ただ、情報開示に積極的な企業と、そうではない企業もある中で、結果的に今回のような疑問の声が出ている以上、招集通知に個人別の報酬総額を記載するなど、事前に何らかの対応を取った方がよかったとはいえるかもしれません。また、役員報酬をはじめとする企業情報開示に関する制度設計を見直すべきではないかという議論が必要かもしれません」

(文=Business Journal編集部、協力=植村拓真/公認会計士)

植村拓真/植村会計事務所代表、公認会計士、税理士

植村拓真/植村会計事務所代表、公認会計士、税理士

1992年兵庫県生まれ、同志社大学法学部法律学科卒業、大手監査法人出身。
ベンチャー企業を立ち上げた経験があり、現在もマーケター等の従業員を多数配置して経営しています。ネットを使った集客・販売の仕組みを構築して、独自の資格試験教育事業を創り上げました。当該事業では勉強に役立つ商品をアフィリエイトしたり、自分のオンライン講座を販売したり、勉強会を開いたり、個別指導のサービスを提供したりすることでマネタイズしています。所長自身が0から起業し、現在も事業運営を行っている「生の経験」を活かして、幅広い業種のクライアントの経営相談(コンサルティング)や節税相談や申告代行業務を請け負っております。現在のクライアントには、売上が数十億円以上のスタートアップ・ベンチャー企業が多数おりますので、安心してお問い合わせくださいませ。
植村会計事務所

Twitter:@Takuma_Uemura_

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