米アップルが10日、iPhone 16シリーズを発表し話題を呼ぶなか、SNS上では「iPhoneに搭載する新機能をだいたい富士通が先周りしている」「ソニーのほうが数年先行している」という投稿が密かに注目されている。かつて富士通が手掛けていたスマホシリーズ「arrows」(現在は別会社のFCNTが展開)やソニーの「Xperia」のほうが先行して開発・搭載していた機能を、実はiPhoneが周回遅れで搭載するケースがあるというのだ。果たして、これは事実なのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
米アップルは10日、iPhone 16シリーズを発表した。まず、iPhone 16とiPhone 16 Plusについては、「カメラコントロールボタン」「アクションボタン」、AI機能の「Apple Intelligence」が新たに搭載された点が従来モデルとの大きな違いだ。カメラをタップするだけで起動・撮影・フォーカス調整ができ、カメラコントロールを指でなぞることでズーム・露出・被写界深度の設定ができる。iPhone 15 Pro(Pro Max含む)で搭載されたアクションボタンが搭載され、サイレントモードの切り替えなどを行える。カメラは48MPメインと12MPカメラのディープフュージョンカメラで、超広角・広角・2倍ズーム・マクロに対応可能。iPhone 15 Proシリーズと同じくカメラ配置が斜めから水平に変更され、空間ビデオの撮影が可能になった。
注目されるのがApple Intelligenceだ。Siriはユーザーの文脈を理解し、たとえばメールは開かずとも概要を受信ボックスから把握できる。電話アプリやメモアプリでは音声の書き起こし・要約ができる。
サイズは前世代モデルから変更はなく、iPhone 16は47.6×71.6×7.80mm、iPhone 16 Plusは160.9×77.8×7.90mm。プロセッサは「Apple A18」を新搭載し、CPUは6コアで、前世代モデルのA16 Bionicと比べて30%高速化した。本体バッテリー容量は拡大され、バッテリー持続時間が延長されている。
各モデルの価格は以下のとおり(税込)。
・iPhone 16
128GB:12万4800円
256GB:13万9800円
512GB:16万9800円
・iPhone 16 Plus
128GB:13万9800円
256GB:15万4800円
512GB:18万4800円
iPhone 16 Pro、iPhone 16 Pro Max
iPhone 16 Pro、iPhone 16 Pro Maxは前世代モデルと比べてサイズが大きくなった。iPhone 16 Proは6.3型、iPhone 16 Pro Maxは6.9型のディスプレイを搭載。こちらもApple Intelligenceとカメラコントロールを搭載。プロセッサは「A18 Pro」を新搭載し、全世代モデルのA17 Proに比べてGPUは最大20%高速化、消費電力は20%削減した。
カメラとしては48MPのFusionカメラ、48MPの超広角カメラ、5倍望遠カメラを搭載し、4K120fpsの動画撮影にも対応。
各モデルの価格は以下のとおり。
・iPhone 16 Pro
128GB:15万9800円
256GB:17万4800円
512GB:20万4800円
1TB:23万4800円
・iPhone 16 Pro Max
256GB:18万9800円
512GB:21万9800円
1TB:24万9800円
アップルは後出しじゃんけんの企業
そんなiPhoneだが、SNS上では「iPhoneに搭載する新機能をだいたい富士通が先周りしている」「ソニーのほうが数年先行している」として、かつて富士通が手掛けていたスマホシリーズ「arrows」やソニーの「Xperia」のほうが先行して開発・搭載していた機能を、実はiPhoneが周回遅れで搭載するケースがあるという見方が一部で話題を呼んでいる。
ITジャーナリスト・石川温氏はいう。
「日本メーカーのケータイが『ガラパゴスケータイ(ガラケー)』といわれていたように、世界を置いていき、独自の進化をしていたのは事実です。ソニーであれば、ケータイで音楽が聴ける機能を提供していたり、FeliCaのような非接触決済技術ももともとはソニーの技術です。富士通もボタンをスライドして操作する機能や、特定のフォルダを隠せる機能など、iOS18で搭載された機能を10年以上前に導入しています。
ソニーや富士通の携帯電話は販売数も少ないので『誰も考えないアイディアや技術で勝負』せざるを得ませんが、iPhoneは販売数も多く、『横綱相撲』で本当にユーザーが求めているもの、他社が導入してユーザーに支持されている機能を後から搭載しても、何ら問題ありません。
スティーブ・ジョブズがCEOだった頃は、アップルは先進性、革新性のある企業というイメージでしたが、ティム・クックCEOになってからは『後出しじゃんけんで、絶対に負けない勝負をする堅実な企業』に生まれ変わっています。今回の生成AIもそうですし、Apple Vision Proも他社が失敗した取り組みを学んだ上で、勝てる勝負を仕掛けています。スマートスピーカーブームの頃も、HomePodという音楽に特化した製品で負けない戦いをしてきましたし、Apple Watchなどもウェアラブルブームで他社が負け始めた段階で、絶対に勝てる勝負をしてきています。業界全体を研究して、絶対負けない勝負を仕掛けてくるのが今のアップルなのです」
(文=Business Journal編集部、協力=石川温/ITジャーナリスト)