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りそな×JCB資本業務提携の狙いとは…「口座×決済データ」が開く中小企業金融

2026.10.20 05:55 2026.10.19 22:45 企業
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=川﨑一幸/金融アナリスト

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●この記事のポイント
りそなHDは2026年10月15日、JCBとの資本業務提携を発表した。既存株主からJCB株式の2.24%を約80億円で取得し、グループの保有比率は5.27%になる。提携の柱は、法人カード・企業間決済の拡充、銀行口座と決済データを組み合わせた与信、地域の加盟店網の活用の三つ。キャッシュレス比率が58.0%(2025年)に達したいま、決済競争の軸が法人と地域へ移りつつある背景を解説する。

 りそなホールディングス(HD)とジェーシービー(JCB)が10月15日、資本業務提携を発表した。りそなHDは11月中旬ごろ、JCBの発行済み株式の2.24%を既存株主から取得する。日本経済新聞によれば取得額は約80億円。傘下のりそなカードとみなと銀行がすでに計3.03%を持っており、取得後のグループ保有比率は5.27%になる。

 数字だけ見れば小さい。経営に影響を及ぼす水準ではないし、両社の関係も今回始まったわけではない。2014年にりそなクレジットカード〈クラブポイントプラス〉JCBで組み、2024年9月には中小企業向けの法人決済で業務提携を結んでいる。ステーブルコイン決済の実証実験でも連携してきた。

 ではなぜ、いま改めて資本を入れるのか。発表文が提携の柱として最初に掲げたのは「法人カードや企業間決済」だった。個人向けのポイント還元競争ではなく、企業の支払いと資金繰り、そして地域の加盟店。今回の提携は、決済ビジネスの重心がそちらへ移りつつあることを示す一つの材料として読める。

●目次

りそなの狙い——金利が追い風のうちに「金利以外」を育てる

 まず前提を確認しておきたい。りそなHDの業績はいま悪くない。2026年3月期の連結純利益は2587億円で前期比21%増。今期は3100億円を目標に掲げる。日銀の利上げで預金と貸出の利ざやが改善しているからだ。

 ただ、内訳を見ると役務取引等収益(手数料収入)は2935億円で、伸びは3%ほどにとどまる。金利は銀行自身が動かせるものではない。追い風が吹いているうちに、景気や金利に左右されにくい収益の柱を太くしておく。今回の出資はその文脈で見ると納得がいく。

 りそなは、埼玉りそな銀行や関西みらい銀行などを抱え、個人と中小企業に特化した「リテール」の大手グループだ。取引先の中小企業とは貸出や口座でつながっているが、その企業が仕入れや経費をどう払い、店頭でどう売上を受け取っているかまでは、必ずしも銀行の手元にない。そこに決済という接点を加えれば、口座、支払い、入金、資金繰りを一続きで提案できる。

 決済インフラを自前で一から組むのは重い。世界で約7200万店の加盟店網を持ち、カード発行(イシュア)、加盟店開拓(アクワイアラ)、ブランド運営を一社で担うJCBと組む方が、時間もコストも読みやすい。

「銀行にとって決済の手数料そのものより大きいのは、取引先のお金の流れが日次で見えるようになることです。決算書が出るのは年に一度ですから」と、地域金融に詳しい金融アナリストの川﨑一幸氏は話す。

「ただしデータを持っていることと、それを審査や提案に使えることは別の話。そこはこれから問われます」

JCBの狙い——「個人の取り合い」の外側に席をつくる

 JCBは日本発で唯一の国際カードブランドだ。2026年3月末の会員数は1億8192万、年間取扱高は50兆円を超える。それでも立ち位置は楽ではない。国内でもVisaやMastercardと同じ土俵で戦っており、個人向けでは経済圏を持つIT企業がポイントで顧客を引きつけている。

 ここで注意したいのは、コード決済が「敵」という単純な構図ではない点だ。経済産業省によれば2025年のキャッシュレス決済額162.7兆円のうち82.7%はクレジットカードで、コード決済は10.2%。しかもコード決済の支払い元にカードが紐づくことは多く、PayPayカードや楽天カードにもJCBブランドがある。IT経済圏は競合であると同時に、取引先でもある。

 それでも、個人の「どのアプリで払うか」を巡る競争では、還元率やアプリの使い勝手が物を言う。ブランド側が主導権を握りにくい領域だ。これに対して企業の経費や仕入れの支払いは、まだ振込や手形の文化が残る。一度仕組みに組み込まれれば切り替えも起きにくい。

 ただし、中小企業に法人カードを持ってもらうには、企業の内情を知る相手が要る。利用枠をいくらにするかも、決算書だけでは決めづらい。2024年の業務提携で両社が「利用枠の拡大」と「高額短期与信サービスの開発」を挙げていたのは、この壁を意識したものだろう。銀行の法人営業と取引情報は、JCBには自力で得にくい資産だ。

「法人カードは一枚あたりの利用額が個人と桁違いになり得る。その分、与信を外したときの痛みも大きい。銀行と組む余地が一番大きいのは、実は加盟店よりこちらです」(同)

「口座」と「決済」がつながると何が起き得るか

 今回の発表文が示した提携の柱は四つある。

法人カード・企業間決済の拡充による、決済業務の効率化と資金管理の高度化
決済と金融をつなぐサービス
地域・日常での決済体験の向上と、決済を金融サービスへの入り口にすること
データやデジタル技術を使った商品・サービスの共同開発
具体的な商品名や時期はまだ示されていない。そのうえで、これまでの流れから考えられる展開を整理しておく。

 一つは、企業間の支払いのカード化だ。請求書をカードで払えば、払う側は支払いを後ろにずらせ、受け取る側は振込より早く入金を確定できる場合がある。ただし受け取る側には手数料がかかる。「誰がそのコストを負うのか」を当事者が合意できなければ普及しない。

 二つ目は与信だ。銀行口座の入出金とカードの利用履歴を組み合わせれば、年一回の決算書より新しい情報で資金繰りを見られる。中小企業にとっては、必要なときに短期の資金を引き出しやすくなる可能性がある。一方で、取引データを与信に使うには本人の同意と、利用目的の丁寧な説明が前提になる。

 三つ目は、発表では触れられていないが、日経の報道で示されたステーブルコインだ。両社はすでに決済の実証実験で組んでおり、企業間の送金や精算に応用できるかどうかは今後の焦点になる。ただ、実用化の時期を語れる段階ではまだない。

「口座データと決済データを合わせた与信は、理屈では以前から言われてきたことです。難しいのは精度よりも、審査の現場と営業の現場でそれを実際に使う運用の方。ここをどう設計するかで差がつきます」(同)

競合との関係——勝ち負けより「役割分担」で見る

 IT経済圏との関係でいえば、りそな×JCBが個人向けの還元競争に正面から加わる様子は見えない。狙うのは店や会社の側、つまり売上の入金、支払い、資金繰りといった業務である。地方の中小企業には、取引銀行の担当者から直接説明を受けたいという声も根強い。対面の接点は、オンライン中心の事業者とは異なる強みになり得る。

 ただ、対面営業は人手もコストもかかる。支店の担当者が本業の貸出と並行して決済端末や法人カードを勧められるのか。その仕組みづくりが、強みを強みのままにできるかどうかを左右する。

 メガバンクの動きも既にある。三井住友フィナンシャルグループは個人向けの「Olive」で銀行・カード・証券を一つのアプリにまとめ、加盟店向けにも決済プラットフォームを展開している。りそながそこと同じ土俵で規模を競うのは得策ではない。地域と中小企業に絞る方が、グループの強みとも合う。

 もう一つ、国内ブランドという観点もある。海外のプラットフォームへの支払いが膨らむ「デジタル赤字」への問題意識が政策でも語られるなか、「国内の決済インフラを使う」ことを評価する事業者はいるだろう。とはいえ、事業者が最終的に選ぶのは手数料と使い勝手だ。「国産」は加点要素にはなっても、それだけで選ばれる理由にはなりにくい。

「決済はもう単体では儲かりにくい。口座、会計、資金繰りなど、何と組み合わせるかの競争になっています。口座を持つ銀行は、その軸になれる立場にいる」(同)

「金庫番」から「お金の流れの伴走者」へ

 80億円、2.24%という規模だけを見れば、業界地図を塗り替えるような話ではない。ただ、10年以上続いてきた協業に資本で裏付けを与え、法人と地域を正面に掲げたことには意味がある。銀行はお金を預かり貸すだけの存在から、取引先のお金の流れ全体に関わる存在へ。今回の提携は、その変化を具体的な形にした一つの例だ。

 政府はキャッシュレス比率を2030年までに65%、将来的に80%へ引き上げる目標を掲げる。2025年は58.0%。残りの差を埋めるのは、都市部の個人より、まだ現金や振込が中心の事業者や地域になるだろう。

 注目したいのは三つ。第一に、法人カードや企業間決済の具体的な商品がいつ、どんな条件で出てくるか。第二に、利用件数や取扱額など、成果を測る数字が開示されるか。第三に、他の地域金融機関が同様の形でカード会社との関係を深めるか。結果が見えるまでには時間がかかる。それでも、地域の決済を考えるうえで追いかける価値のある事例だ。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=川﨑一幸/金融アナリスト)

【主な参照データ・出典】
りそなHD、JCBと資本業務提携 株式約2%を80億円で取得(日本経済新聞、2026年10月15日)
資本業務提携契約を締結(ペイメントナビ)
りそなHDとJCBの資本業務提携(Impress Watch)
りそなHDとJCBの業務提携契約締結(2024年9月11日、りそなHD)
りそなHD 2026年3月期決算短信
2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました(経済産業省、2026年3月31日)
JCB早わかり(会員数・取扱高、2026年3月末)

BusinessJournal編集部

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公開:2026.10.20 05:55