例えば09年、政府は新型インフルエンザ対策として、海外ワクチンの輸入に踏み切り、国産ワクチンの不足を解消するためとはいえ、初めて臨床試験を簡略化する「特例承認」も認めた。また昨年には予防接種法が改正され、同年の新型インフルエンザと同等レベルのインフルエンザが発生した場合、国の指示により、市町村は住民に予防接種を受けるよう勧奨を行うことが定められた。
こうした流れを受け、日本の製薬企業各社は、市場獲得を目指してワクチン事業の強化を進めることが急務となった。とはいえ、豊富なワクチン製品を持つのは英国のグラクソ・スミスクライン(GSK)やフランスのサノフィ、スイスのノバルティスといった外資系ばかり。第一三共や武田薬品工業など国内製薬企業はワクチンの開発力が乏しく、彼らと手を組んで共同開発、共同販売などで旨味を分けてもらうしかないようだ。
2012年3月2日、第一三共とGSK日本法人は東京都内で会見を開き、両社がワクチン事業で提携すると発表した。折半出資でワクチンの開発と営業を行う事業会社「ジャパン・ワクチン」を設立して7月から事業が開始される予定だ。
第一三共の中山譲治社長は「とにかく早く日本にワクチンを持ち込むことが使命。GSKの豊富な製品を、我々の営業基盤で日本国内に行き渡らせたい」と意気込みを示し、GSK国内法人のフォシェ社長は「一緒にやったほうが早く製品を出せるだろうと、昨春から話し合っていた」と提携の背景を説明した。
具体的な提携内容としては、帯状疱疹(ほうしん)ワクチン、肺炎球菌のワクチンなどの開発を共同で進めるほか、すでに両社が持っている子宮頸(けい)がん、インフルエンザ、風疹、ロタウイルスなどのワクチンを共同開発し販売する、という。