しかし、この返金サービスには否定的な意見があるのも事実。なにしろ西友といえば、2002年の「偽装肉問題」の際にも、レシートなしで返金に応じると宣言し、返金を求める客が店舗に殺到するなどの大騒ぎを起こしたことがあるからだ。この返金パニックによって、西友の返金総額は当初見込みの4倍近い約5000万円に膨れ上がったという。
また、昨年の「食品偽装問題」でも、関西のホテル系列のレストランがレシートなしで返金に応じる旨を発表したところ、利用客になりすまして返金を求める人が続出したともいわれている。そのため、今回もクレーマーのようなタチの悪い客が店に殺到し、一般の客が迷惑する事態になるのでは、と心配する声が上がっている。
もっとも、実際に東京・新宿区内にある西友の店舗に行ってみると、サービスカウンター前に返金を求める客が殺到しているどころか、むしろ並んでいる気配もない。生鮮食品の各コーナーには「ど生鮮」「生鮮食品 満足いただけなれば返金保証」という派手な広告が天井から吊るされているが、小1時間ほど見ていた限りでは、返金サービスを利用したのは30代女性と50代女性のわずか2人。サービスカウンター内の女性店員に聞いても、「返金を求めるお客様が殺到するようなことにはなっていません。野菜が傷んでいたというような理由でレシートをお持ちになるお客様はいらっしゃいますが、以前とほとんど変わりありません」と言う。いまのところ、サービスを悪用する客が続出する事態とはなっていないようだ。
●ウォルマートは売り上げも利益もアップ
実は、もともとこの生鮮食品の全額返金サービスは、西友の親会社である米ウォルマートが米国やカナダ、英国ですでに行っているもので、米国では一時的に返金額が膨らんだものの、結果的に売り上げも利益もアップしたという。その狙いは生鮮食品の品質・鮮度を強化して客の満足度を向上させることにあるといわれる。西友は2002年にウォルマートと包括提携してからは、ウォルマート流の「エブリデー・ロープライス(毎日安売り)で低価格戦略を進めてきたが、今度は返金サービスで鮮度にもこだわってイオンやセブン&アイグループに対抗、食品スーパー業界で生き残りを図ろうというわけだ。
そもそも、消費税率引き上げによって、今後は客の商品選別基準はどんどん厳しくなると予想されている。それもあり、数年前から「全額返金サービス」を取り入れて品質の良さを印象付けたり、商品をアピールしようという企業が目立つようになった。