対照的な内容となったのが、流通業界最大手イオンが4月10日に発表した連結決算だ。同社は営業収益こそ前期比12.5%増の6兆3951億円となり、業界初の6兆円台に乗せたものの、営業利益は同10.1%減の1714億円、最終利益は同38.8%減の456億円と冴えない内容となった。
セブンは営業収益こそトップの座をイオンに譲ったものの、営業利益はイオンの約1.98倍、最終利益は3.85倍と、収益力ではイオンを圧倒した
●過度のコンビニ事業依存
これだけの好業績だったにもかかわらず、証券アナリストたちの反応は「サプライズなし」「想定内の決算」など、冷めた評価が大半だった。加えて、「これでは2、3年先の業績がどう転ぶかわからない」と心配する声も上がっていた。アナリストの一人はその理由を「好業績の中身が異常だから」と、次のように説明する。
3397億円という国内流通業初の金字塔を打ち立てた営業利益を事業分野別に見ると、コンビニエンスストア事業(以下、コンビニ事業)が2575億円で全体の75.8%を占めている。次に比率が高いのが金融関連事業の449億円で、全体の13.2%。同事業の営業利益は、セブン銀行が主にセブン-イレブン店内に設置しているATM、セブン・カードサービス発行の「セブンカード」(2月末会員数約350万件)、セブンCSカードサービス発行の「クラブ・オン/ミレニアムカード セゾン」(同約328万件)などからの稼ぎ。いずれも利用者の大半はセブン-イレブンの来店客で、「コンビニ事業の付帯事業のようなもの」(前出アナリスト)といえる。したがって、セブンの営業利益の89.0%をコンビニ関連事業が稼ぎ出しているともいえる。
そして、総合スーパーのイトーヨーカ堂、食品スーパーのヨークベニマル、ベビー用品専門店の赤ちゃん本舗などのスーパーストア事業が稼いだ営業利益は297億円で全体の8.7%、百貨店のそごう・西武、生活雑貨専門店のロフトなど百貨店事業が稼いだ営業利益は66億円で、全体の1.9%にしかすぎない。
セブンの本業である流通業は、まさに「コンビニにおんぶにだっこ」状態。「セブンの収益構造は、どう見ても歪んでいる。何かのショックでコンビニ事業が失速すれば、セブン全体が失速する。2、3年先の業績を読めないのが不安」(同)という状況なのだ。
●非コンビニ事業の成長を図る
だが、流通業界関係者は「セブンの事業モデルの脆さは、セブン自身が早くから認識している」とも分析し、同社が推進中の「オムニチャネル戦略」(以下、オムニ戦略)の意外な目的を指摘する。オムニ戦略は昨年秋頃から同社が打ち出している成長戦略で、昨年12月2日に発表したカタログ通販大手ニッセンホールディングス買収を機にメディアの注目を浴びて以降、業界内で話題になっている戦略だ。同関係者は、「オムニ戦略の本当の目的は、『成長をてこにした事業モデル改革』だ」との見方を示す。