(「セブン-イレブン・ジャパンHP」より)
東京都・墨田区の曳船店と埼玉県・草加市の草加店の2店でパートを中心とした店舗運営の実験が進行中だ。曳船店では84人いた正社員を51人に縮小。パートは73人増えて325人となった。パートの比率は86%と10ポイント高まった。
各売り場の責任者は正社員からパートに替わった。パートの従業員に売り場のレイアウトから商品の発注まで全部任せる。検討会では商品の売れ行きなどを報告する。やっている仕事は正社員とまったく同じだ。
ヨーカ堂のパートはリーダー、キャリア、レギュラーの3段階に分かれている。全体の10%弱までリーダーを増やす。正社員を半減させた後の業務をリーダーに担当してもらうことにする。
この2店の取り組みは、全国178店の中で、最初の第一歩となる。2013年には正社員を半減、パートを9割の店舗を20店舗に拡大する。
セブン&アイが今年9月8日に打ち出した大改革で、ヨーカ堂は2016年2月期までに8600人の正社員を半減させ4300人とする。パートの比率を全従業員の9割に高めることによって、人件費を100億円削減する。パートは6800人多い3万5000人に増やす計画だ。
正社員の見直しに踏み込む一方で、パートを戦力化してセルフ方式から対面販売、接客重視にかじを切る。店長がパート、売り場の責任者もパート、従業員もパートという運営でGMSの再生に挑む。これは日本の雇用形態を根底から突き崩す“鈴木敏文革命”なのである。
来年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、希望する社員に65歳までの雇用が義務づけられる。企業は60歳を越えても働けるように定年を65歳まで延長するなど、対応を急いでいる。そのさなかで、セブン&アイは正社員を半減するわけだ。これは企業経営者と正社員の地位に安住していたサラリーマンに衝撃を与えた。
65歳までの雇用が義務づけられれば、それだけで人件費の負担は増す。経団連では、45歳以降の賃金を抑えてオーバー60の人件費をひねり出す動きを見せている。セブン&アイは、こうした動きの一歩先をいくことになる。
「流通王」と呼ばれる鈴木敏文が大改革に踏み切ったのは、グループ内の事業の二極化に直面しているからだ。セブン-イレブン・ジャパンは絶好調だが、GMSのイトーヨーカ堂は絶不調だ。セブン&アイの利益の過半は、コンビニ事業が稼ぎ出している。
セブン-イレブンと海外コンビニの売上高を含めた2013年2月期のグループの総売上高は8兆5300億円の見込み。このうちコンビニは5兆4000億円と、グループの全売り上げの6割強を占める。